[高校別 プロ野球選手輩出ランキング]トップは10年で17人輩出の大阪桐蔭、甲子園未出場校も…
過去10年、プロ野球界に最も多くの選手を輩出している高校はどこか――。
本稿では、2009年から2018年までにドラフトで指名され、プロ入りを果たした全995選手を対象に出身高校をランキング化。
なお、大学、社会人、独立リーグを経てプロ入りしたケースもランキングの対象内とし、プロ入りを拒否した選手は対象外としている。ぜひ予想しながら読み進めてほしい。
(文=花田雪、写真=Getty Images)
1位はやはり大阪桐蔭 驚異の17人を輩出
結論からいうと、ランキング1位は大阪桐蔭の17人。おそらく、多くの野球ファンのイメージ通り、誰もが納得いく結果といえるだろう。この10年間だけでも、甲子園で2度の春夏連覇を含む6度の優勝。現在の高校野球界を牽引する「絶対王者」に君臨し続けている。
大阪桐蔭のすごさは、高校野球界でも結果を残しつつ、さらに上の「プロ野球」というカテゴリーに多くの選手を送り込んでいる点にある。さらにいえば、プロに選手を送り込むだけでなく、後に1軍のレギュラークラス、球界を代表する選手へと成長しているケースが非常に多い。
過去10年間でドラフト指名された選手の中からも、森友哉、岡田雅利(ともに西武)が1軍の主力としてプレー。現在は苦しんでいるが、阪神で高卒1年目から3年連続2ケタ勝利をあげた藤浪晋太郎も大阪桐蔭OBの一人だ。「過去10年間」のくくりにこだわらなければ、その面々はさらに豪華さを増す。
中村剛也(西武/2002年入団)、岩田稔(阪神/2006年入団)、西岡剛(元阪神/2003年ロッテ入団)、平田良介(中日/2006年入団)、中田翔(日本ハム/2008年入団)、浅村栄斗(楽天/2009年西武入団)……。各球団の主力はもちろん「侍ジャパンレベル」の一流選手をこれほど多く輩出している高校は、ほかにない。
また、大阪桐蔭の特徴としてもう一つ、「ドラフト1位選手の大量輩出」があげられる。前述の平田、中田、藤浪、森に加え、昨年ドラフトでは根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)が1位指名を受けてプロ入り。そのすべてが「高卒ドラフト1位」でもある。
高校野球界で結果を残しながら、プロで活躍する選手も育成する――。この2つを両立できる最大の理由。それは、「素質のある選手をしっかりと育て上げ、3年間でプロレベルまで到達させる」育成力にほかならない。
実は前述の大阪桐蔭出身選手のほとんどが、中学時代から全国に名をはせた、いわゆる「スーパー中学生」でもある。全国屈指の名門校である大阪桐蔭には毎年、有望な中学球児が集う。中にはそのスカウティングや、才能ある選手たちを集める「オールスター化」を批判的な目で見るファンもいるが、才能あふれた中学生を集めるだけで勝てるほど、高校野球は甘くない。実際に、中学時代までは「怪物」と騒がれながら、高校で思うように成長できなかった選手は星の数ほどいる。才能あふれる原石をしっかりと磨き上げ、3年間でドラフト1位指名されるレベルまで引き上げる――。簡単なようで実はおそろしく難しい作業を、大阪桐蔭はコンスタントにこなしているのだ。
2、3位には神奈川の覇権を争う2校 4位広陵のある特徴とは?
ランキング2、3位には、横浜、東海大相模という神奈川の覇権を二分する名門校が名を連ねる。横浜は松坂大輔(中日/1999年西武入団)を筆頭に大阪桐蔭同様、プロでも活躍する選手を多く輩出。近年でいえば筒香嘉智(DeNA)、近藤健介(日本ハム)がその代表格だろう。
東海大相模も菅野智之(巨人)、田中広輔(広島)といった1軍主力レベルを育て上げるなど、「名門」の名に恥じぬ育成力を見せている。
過去10年間で12人のプロ野球選手を輩出し、ランキング4位となった広陵には、面白い特徴がある。12人のうち、野村祐輔、小林誠司、有原航平、上原健太、中村奨成の5人が「1位指名」というのも特筆ものだが、そのうち中村を除く4選手が高卒ではなく大学や社会人を経由してドラフトで1位指名を受けているのだ。
同じように「ドラフト1位選手」を多く生む大阪桐蔭が「高卒1位偏重」なのに対し、広陵は高校卒業時にはドラフト指名されなくても、そこから上のカテゴリーでしっかりと実力をつけてプロ入りする選手が多い。
ランキング上位の高校で見ると、大阪桐蔭、横浜の2校が「高卒指名」、東海大相模、広陵の2校が「大卒、社会人」からの指名が多い。この傾向から各校の「色」が透けて見える。
新興勢力・花咲徳栄、甲子園未出場・つくば秀英もランクイン
ランキング5位以下からも、気になる高校をいくつか挙げてみたい。まずは、6位の花咲徳栄。甲子園初出場は2001年夏と、高校野球界では比較的「新興勢力」の部類に入る。
近年は2015年から4年連続で夏の甲子園に出場、2017年には初優勝も飾るなど、埼玉高校野球界を牽引する存在だが、2016年西武入団の武田愛斗(旧姓:大瀧、現登録名は愛斗)から2017年広島入団の高橋昂也、2018年中日入団の清水達也、西武入団の西川愛也、2019年日本ハム入団の野村佑希と、夏の甲子園出場と同じく4年連続で高卒のドラフト指名選手を輩出している。上記の5選手はまだ入団4年以内だが、2年目の西川、1年目の野村以外は1軍デビュー済み(2019年7月30日現在)。
今後、大阪桐蔭や横浜のように「高卒ドラフト選手」をさらに輩出していく可能性も高い。
ここ10年でプロに6人を輩出しているつくば秀英にも注目したい。ランキングしている上位校はすべて、甲子園出場経験のあるいわゆる「名門校」だが、同校はこれまで一度も甲子園出場がない。にもかかわらず、「過去10年でプロ野球選手6人」は、異例といえる。代表的な選手は、育成入団ながら2012年にはシーズン8勝をあげた山田大樹(ヤクルト/2007年ソフトバンク入団)、阪神で4番を務める大山悠輔など。
練習場はいわゆる「野球場」ではなく、長方形の「グラウンド」。そのため、紅白戦や練習試合などの「実戦」はもちろん、フリーバッティングやノックもままならない。そんな環境下でも試行錯誤し、体の使い方ら効率の良い練習で技術を高めている。
過去10年のくくりだけで見ても、全国の高校の特徴が透けて見える。高校野球は「プロに何人の選手を送り込んだか」を競う競技ではないが、こういう視点で高校野球、ドラフトを見るのも、面白いのではないだろうか。
<了>
[ 高校別 プロ野球選手輩出ランキング ]
1位 大阪桐蔭(大阪) 17人
2位 横浜(神奈川) 14人
3位 東海大相模(神奈川) 13人
4位 広陵(広島) 12人
5位 仙台育英(宮城) 11人
6位 花咲徳栄(埼玉) 9人
6位 九州国際大付(福岡) 9人
6位 日大三(東京) 9人
9位 桐蔭学園(神奈川) 8人
9位 青森山田(青森) 8人
9位 帝京(東京) 8人
9位 敦賀気比(福井) 8人
13位 秀岳館(熊本) 7人
13位 北海(北海道) 7人
13位 明徳義塾(高知) 7人
16位 つくば秀英(茨城) 6人
16位 愛工大名電(愛知) 6人
16位 浦和学院(埼玉) 6人
16位 岡山理大付(岡山) 6人
16位 沖縄尚学(沖縄) 6人
16位 九州学院(熊本) 6人
16位 佐野日大(栃木) 6人
16位 星稜(石川) 6人
16位 智弁和歌山(和歌山) 6人
16位 八戸学院光星(青森) 6人
16位 北照(北海道) 6人
16位 履正社(大阪) 6人
28位 PL学園(大阪) 5人
28位 花巻東(岩手) 5人
28位 菰野(三重) 5人
28位 健大高崎(群馬) 5人
28位 作新学院(栃木) 5人
28位 山形中央(山形) 5人
28位 聖光学院(福島) 5人
28位 創価(東京) 5人
28位 早稲田実(東京) 5人
28位 大分商(大分) 5人
28位 中京大中京(愛知) 5人
28位 東邦(愛知) 5人
28位 東洋大姫路(兵庫) 5人
28位 報徳学園(兵庫) 5人
42位 横浜創学館(神奈川) 4人
42位 関東一(東京) 4人
42位 岐阜商(岐阜) 4人
42位 興南(沖縄) 4人
42位 桐光学園(神奈川) 4人
42位 桐生第一(群馬) 4人
42位 高知(高知) 4人
42位 市柏(千葉) 4人
42位 習志野(千葉) 4人
42位 神戸国際大付(兵庫) 4人
42位 盛岡大付(岩手) 4人
42位 静岡(静岡) 4人
42位 石見智翠館(島根) 4人
42位 専大松戸(千葉) 4人
42位 中京学院大中京(岐阜) 4人
42位 福井工大福井(福井) 4人
42位 福岡工大城東(福岡) 4人
42位 福岡大大濠(福岡) 4人
※2009~2018年実施のドラフトより集計
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