古橋亨梧、旗手怜央、前田大然らが躍動するセルティック。クラブ関係者が語る日本人選手の評価とは?

Career
2023.03.06

2月26日に行われたスコットランドのリーグカップ決勝。宿敵レンジャーズを古橋亨梧の2得点で2-1で下し、大会2連覇を果たしたセルティック。リーグ戦でも首位に立ち、国内3冠を目指すスコットランド王者では、今季、日本人選手が目覚ましい活躍を見せている。古橋がゴールを量産し、前田大然がチームにダイナミズムを注入し、旗手怜央が攻撃の起点を担う。では、彼らはスコットランド現地でどのような評価を受けているのだろうか? アカデミー全体のトップを担い、トップチームにも精通するクリス・スミス氏に話を聞いた。

(インタビュー・構成=柴村直弥、写真=Getty Images)

トップスコアラー古橋亨梧は、ファンからとても愛されている

――現在セルティックでは古橋亨梧、旗手怜央、前田大然、小林友希、岩田智輝と5人の日本人選手がプレーしています。彼らの存在はセルティックサポーターにどのように受け入れられていますか?

クリス:サポーターは日本の選手たちをとても誇りに思っていますし、毎試合彼らのプレーを見て興奮しています。実際にスタジアムで彼らを見て、ゴールを決めたときであれ、いいパスであれ、いいタックルしたときの大歓声を聞けば、彼らがどれほどサポーターに愛されているか感じてもらえると思いますよ。日本とスコットランドの親和性が試合ごとに強くなっているようにさえ感じます。

――咋シーズンはケガによる離脱もありながらリーグ戦12得点を挙げて得点ランキング2位。今シーズンは現在堂々の得点ランキング1位に立っている古橋亨梧選手についてはどう評価されていますか?

クリス:亨梧はチームの中心人物であり、メインストライカーです。どのサッカークラブでもそうだと思いますが、チームのために最も多くのゴールを決める選手は、常にファンからとても愛されています。亨梧は内面も素晴らしく、サポーターを楽しませてくれます。セルティックにおいて重要なゴールに向かうプレーも見せてくれるし、賢くて、優れたフィニッシャーです。今シーズンでのトップスコアラーであり、信じられないくらいいい選手です。

前田大然は物静かなハードワーカー。旗手怜央はファンタスティック!

――古橋選手同様に今シーズン好調を維持している前田大然選手はどうですか?

クリス:大然はどちらかというと物静かな選手です。右と左、両ウイングでプレーできて、チームで一番のハードワーカーです。並外れた運動量を持っていて、プレッシングやボール奪取能力といった面でも重要な働きをしてくれています。

――FWの選手でありながら、守備面でも評価されているのですね。

クリス:彼はチームが攻め込んでいる直後、相手チームにカウンターを受けたときにでも、誰よりも早く自陣に戻ってきます。攻守におけるアグレッシブな動きで、セルティックが求めているフットボールを見事に表現してくれています。判断能力も優れており、ボールが逆サイドのウイングから入ってくるのが見えたときには、素早く相手ゴール前に侵入し、クロスに合わせられる絶妙なスコアリングポジションに入ってきます。スコアラーとしてボックスでのプレーも優れています。大然のプレーの質、アイデア、そして何よりハードワークがセルティックファンを楽しませています。

――古橋選手、前田選手と同様に今シーズン重要な働きを見せている旗手怜央選手は?

クリス:怜央はファンタスティックな選手です! 守備から中盤への攻撃の起点になるパスが出せ、ラストパスの精度も非常に高い。セルティックの突破を見ていると、怜央のディフェンスが起点になっていることが多く、さらにボールを奪った怜央から出されたパスがチャンスを創出しています。彼はスペースを見つけるのがうまく、判断能力に優れ、ピッチの中で創造力もある選手で、セットプレーも上手です。中盤で重要な役割を果たしていて、怜央とカラム・マグレガーは鉄板のMFですね。25歳であれほどの完成度を持つ選手はなかなかいない。セルティックにおける彼の役割は本当に大きいです。

井手口陽介もフィット時は抜きん出たパフォーマンスを見せていた

――まだ加入して日が浅いため評価は難しいかと思いますが、岩田智輝選手、小林友希選手はどうですか?

クリス:岩田と小林は今年1月にサインをして、まだあまり試合に出場できていないですが、岩田は、セルティックに来る前の映像で見る限り、技術面が優れていて、ポジションどりもうまい。彼も怜央同様に「ゲームをつなげる」のがうまい選手で、エネルギーを持っている選手でもあると感じます。セルティックでは、攻撃時に広い守備範囲をカバーできる選手が求められますが、彼はボールを奪ってやるという気迫を常に見せられる選手であり、その役割を担えると思います。

小林はセンターバックで左側に位置し、ヴィッセル神戸時代の試合を見ると落ち着いてボールを処理するクレバーなディフェンダーでポジションどりもうまい。セルティックにとって大事なのは、彼が前に正確なパスを出せる能力を持っているということです。私たちはいつもGKからプレーを始めるので、ディフェンダーが落ち着いてボールを処理しなければいけません。小林は、こういった要素をすべて満たしています。

――現在、セルティックからJ1リーグのアビスパ福岡に期限付き移籍している井手口陽介選手はどのように見ていましたか?

クリス:井手口はセルティック時代、ケガに苦しみ、なかなかピッチに立てないという不運に見舞われました。しかし、彼は周りからいつも素晴らしいチームメートだと敬意を払われていましたし、フィットしているときは抜きん出たパフォーマンスを見せてくれました。今は日本に期限付き移籍していますが、彼はまだセルティックの選手です。いつかまたセルティックのジャージを着た彼に会えることを願っています!

アンジェ・ポステコグルー監督が日本人選手を高みへ。中村俊輔は…

――2018年から2021年まで横浜F・マリノスで指揮をとり、2019シーズンは優勝も経験。日本人にも馴染みが深い、現セルティックのアンジェ・ポステコグルー監督はどのように評価されていますか?

クリス:アンジェは、マネジメント能力に優れた監督です。セルティックにはたくさんの日本人選手がいますし、イスラエル、モンテネグロ、アメリカ、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、スウェーデンなど他の国から来ている選手もたくさんいます。特に現在5人いる日本人選手のことはよく理解していて、そのことが彼らをより成長させていると思います。

――ポステコグルー監督はオーストラリアとギリシャの2つの国籍を持ち、その両国と日本での指導実績がある指揮官です。

クリス:何よりアンジェはまず選手の内面を見る人です。選手たちは皆違ったパーソナリティー、強み、スキルを持っており、アンジェはそのことをよく理解しています。これは選手だけに限らず、すべての人に対する対応の仕方をよく知っているということです。サポーターに対する対応でもそうですし、クラブスタッフでもそうですし、彼と話した人は誰でも「ポステコグルー監督はマネジメントに長けている」と評価します。

――セルティックと聞いて、誰もが思い浮かべる日本人選手の一人として、2005年から2009年にかけて在籍した中村俊輔選手の存在も大きいと思います。

クリス:彼は4年間でトロフィーを6つ獲得したと思います。また、うまく周囲を生かせる選手でもあり、同時期にセルティックの選手4人がMVPを受賞しています。ファンタスティックで特別な存在でした。素晴らしい左足を持つ驚異的な選手でありながら、とても謙虚な人でもありました。彼はセルティックにレガシーを残してくれたと思います。そして、スコットランドでプレーしている日本人選手たちも皆、中村を尊敬して見習っています。中村はクラブにとって、これまでもこれからも重要な存在です。

セルティックと契約しくれている選手たちの出身国とつながりたい

――セルティックはこの春から子どもたちを対象にしたサッカーキャンプを日本で開催されます。セルティックキャンプを日本で開催するきっかけは、日本人選手がクラブでプレーしていることが大きいのですか?

クリス:セルティックでの日本人選手の活躍を受けて、日本に興味を持ったという意味ではその通りです。また、セルティックにはインターナショナルパートナーシッププログラムがあります。世界中に33のパートナーがいて、すべて各国のサッカークラブです。パートナー先にコーチエデュケーションや、選手育成のノウハウを提供しています。今回日本でGOAL APP JAPANというパートナーと出会い、キャンプを開催できるのは本当にいいスタートです。日本の育成年代の子どもたちのポテンシャルを知り、成長に寄与するのはもちろん、日本でのセルティックと組みたいパートナークラブを探すいい機会であるとも考えています。

――日本人選手の印象がセルティックのスタイルと親和性があることもキャンプを実施する理由の一つですか?

クリス:それもありますが、どちらかといえばセルティックと契約しくれている選手たちの出身国とつながりたいという思いのほうが強いかもしれません。それは選手のためですし、クラブとして取り組むべきことだと思います。今季はカナダ代表のアリスター・ジョンストンとも契約しましたが、日本と同様にカナダでもキャンプを行い、将来性を持つ若い選手たちをサポートしています。

その上で、プレー面でも親和性を感じる日本の育成年代の選手たちと関わりたいという思いも当然あります。日本の子どもたちが、亨梧や大然や怜央のような選手を目指せるようにサポートする機会を継続的に提供していきたいと考えています。

――今回の日本でのキャンプをきっかけに、今後どのように日本と関わっていきたいですか?

クリス:セルティックは、日本で長期的で持続可能な関係を築きたいと考えています。他の国でも同様に、初めは小規模なものから始めます。そのためにはまずは今回のキャンプで成功を収めることが大切です。多くに人にセルティックのことを知ってもらうことはもちろん時間がかかるとは思いますが、日本にファンベースを広げ、フォロワーを増やし、確かな足跡を残したいです。キャンプでは、日本の若い選手と一緒にプレーをして、将来プロでプレーしたいと思う選手に対しても、よい関係が築けると思います。

【連載前編】「バルセロナとは全く異なるものになる」アカデミートップが語る“セルティック流”育成哲学

<了>

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全国3会場でセルティックキャンプを開催!

セルティックサッカーアカデミーが、東京キャンプ(3月26日〜3月28日)、福岡キャンプ(3月29日〜3月31日)、広島キャンプ(4月2日〜4月4日)の3会場でキャンプを開催。男女を問わず7歳~13歳の子どもたちを対象にセルティック流のトレーニングを行う。各会場先着50名。

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[PROFILE]
クリス・スミス
1983年2月9日生まれ、スコットランド・エディンバラ出身。スコットランドサッカー協会で12年間、選手育成とコーチエデュケーションの仕事に携わった後、2020年よりセルティックFCのサッカーアカデミーに加わり、北アメリカにあるすべてのパートナークラブを担当。2021年7月、セルティックサッカーアカデミーのヘッドコーチに昇進し、スコットランド国内及び全世界のパートナークラブを管轄するトップとなり、セルティックFC女性チームのコーチも務める。スポーツコーチング分野で優秀な成績を修め、UEFA Aライセンス、UEFAエリートユースAライセンスを取得。自らヘッドコーチとして指導も行いつつ、セルティックトップオブサッカーアカデミーとしてアカデミー全般のトップも担っている。

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