「きっかけは浦和レッズサポーターとの会話」那須大亮がYouTubeで紡ぐ“想い”の価値

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2022.08.12

スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。この春からはJFN33局ネットの全国放送にリニューアル。この日は番組スタート以来初めてWebメディア「REAL SPORTS」の岩本義弘編集長が単独でパーソナリティーを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。ゲストには人気YouTuberで元プロサッカー選手の那須大亮さんが登場。多くの批判を受けながらも現役時代にYouTubeを始めた理由と試行錯誤、その先にたどり着いた自身が監督を務めるYouTuberチーム「WINNER’S(ウィナーズ)」の活動についても語り尽くす。

(構成=池田敏明、写真提供=JFN) ※写真は左から岩本義弘、那須大亮

批判一色のYouTube活動、イニエスタ登場で一変

岩本:今回のゲストは、元Jリーガーで、現在はYouTuberとして活躍されている那須大亮さんです。普段は五十嵐亮太さん、アシスタントの秋山真凜さんと3人でやっているんですが、今日は1人なので緊張しています。

那須:そんな貴重な機会に、逆にありがとうございます。

岩本:那須さんには横浜F・マリノス時代や浦和レッズ時代にインタビューをさせていただいたことがあります。現在はYouTuberとして大活躍されており、チャンネル登録者数は40万8000人(番組出演時)。サッカー界では第一人者であり、本格的に活動し始めたのも早かったですよね。

那須:そうですね。まだ現役だった4年前に始めたんですけど、当時はサッカー選手でやられていた方はいなかったと思います。

岩本:YouTubeをやり始めたきっかけをお聞かせください。

那須:きっかけは浦和レッズのファン・サポーターの方との会話です。街でファン・サポーターの方が僕に気づいてくださると、以前は「那須選手、頑張ってください」と声をかけてくださることが多かったんですけど、浦和では皆さん「一緒に戦いましょう」と言うんですよ。最初は「どういう意味だ? ピッチで戦っているのは俺たちなのに」という感覚だったんですけど、いざピッチに立ってプレーしてみると、自分にとって一番苦しい時間帯に初めてサポーターの声が耳に届き、背中を押されている感じがありました。本当に僕らと一緒に戦ってくれているんだとその時に初めて実感して、それまでは自分の幸せに価値を感じていたものが、何かを通じて自分の思いを誰かの価値にしていきたいと考えるようになり、それがYouTubeにつながっていきました。

岩本:実際に始めた時、最初はどんな反響だったんですか?

那須:賛否でいえば「否」しかなかったです(苦笑)。コメントも否定的なものばかりでしたし、最初はやることの軸も決まっていなかったんですよ。コンテンツの内容も、自分の好きなことをやってライト層に届けばいい、サッカー人気につながればいい、という漠然とした感じだったので、単刀直入に言って、動画として面白くなかったです。

岩本:4年前は現役のJリーガーがYouTubeをやることもなかったですし、SNSの発信自体、やり過ぎると「もっとサッカーに集中しろ」と批判される傾向がありました。

那須:まさにそう言われることが多々ありましたし、僕自身も「確かにそう言われるよな」と思う部分もありました。でも、そういう言葉が飛んでくるのは想定内だったので、タイミングなどもしっかり見極めながら活動を続けていこうと思っていました。

岩本:その中で、潮目が変わったのはいつ頃からなんですか?

那須:始めて半年ぐらいのタイミングで、その年にヴィッセル神戸に加入したアンドレス・イニエスタ選手にダメ元で出演をお願いしたら「いいよ」と言ってくれて。イニエスタ選手が出てくれたことで選手や関係者への認知も広がりましたし、その頃からコンテンツの軸が定まり、周りの方や視聴者の方の声も変わっていきました。

岩本:僕も雑誌やウェブ、番組などでいろいろなキャスティングをしてきましたが、大物の方が出てくれると、その後は信用度が高まってすごくやりやすくなりますよね。その意味では、イニエスタ選手は那須さんのYouTubeにとって重要な存在だったんですね。

那須:重要な存在でしたし、その後に加入したダビド・ビジャ選手にもお願いしようと思ったら、向こうから「YouTubeやろうぜ」と言ってくださって。向こうも媒体を持っていたのでまさかのコラボが実現し、その後もルーカス・ポドルスキ選手などの出演につながっていきました。

投稿はほぼ毎日。「YouTuber最強チーム」企画も

岩本:現状では週に何本ぐらい動画をアップしているんですか?

那須:今はほぼ毎日という感じですかね。

岩本:ほぼ毎日はすごいな~。チャンネルの戦略や方針は那須さんが1人で決められているんですか?

那須:一応チームがあるんですけど、基本的には僕の考えを中心に進めさせてもらっています。スタッフからアドバイスをもらうこともありますし、チームミーティングで今後のビジョンを話し合うこともあります。

岩本:コラボの依頼も多いんじゃないですか?

那須:ありがたいことにサッカー系の方々から言っていただくことはあるんですけど、登録者数40万人はインフルエンサーとしてはまだまだだと思っているので、サッカー以外の方々とのコラボも今後、自分からお願いしてつなげていければいいなと思っています。

岩本:メディアとして周囲から認められるようになったのは登録者数が何人ぐらいからなんですか?

那須:引退までに10万人を超えたいと思っていたんですが、引退の半年ぐらい前のタイミングで6万人ぐらいだったんですよ。そこから戦略を立て、引退間際には毎日投稿を始めるなどして、内容の濃いコンテンツを配信できるようになりました。それによって10万人を超え、いち媒体として認知されるようになっていきました。

岩本:10万人を超えるのは、かなり戦略的にやらないと難しかったということですね。

那須:そうですね。いろいろな方のお力をお借りしたんですけど、サッカー選手や有名なインフルエンサーの方を一堂に集め、サッカーとエンターテインメントを掛け合わせた大型企画ができたので、それがかなり大きかったですね。現役選手とYouTuber、両方の顔を持っていたからこそできた企画だったと思っています。

岩本:ご自身のチャンネル以外にも、「YouTube界最強のサッカーチームを作る」というコンセプトの下でWINNER’Sというチームを作り、監督兼プレーヤーを務めています。

那須:インフルエンサーの方々が集まって本気でサッカーをするコンテンツはそれまでなかったですし、サッカーとエンターテインメントを掛け合わせるのが難しい部分はあったんですが、エンターテインメント性の高いYouTuberが本気でやるところに新しい価値を見いだせるチームになってきたと思っています。

岩本:見ているうちに、自分が彼らの仲間になっていくような感覚がありますし、チームメートがわちゃわちゃしている感じも楽しいですよね。

那須:普段はすごく和気あいあいと、僕も含めてファミリーみたいな感じでやらせてもらっています。練習回数はそんなに多くないんですけど、YouTuberはいつどうなるかわからない職業なので、1回にかける思いや覚悟はすごく強いですし、学ばせてもらうこともあります。毎回、感動や勇気をもらっていますね。

岩本:サッカーの時はむちゃくちゃ真剣なのに、オフ・ザ・ピッチになると笑いを取りにいくのがエンターテインメントとして面白いですし、那須さんが目指している日本サッカーの普及・発展や裾野の拡大につながっている気がします。

那須:新しい層にリーチできている感覚がありますし、若年層の方々にサッカーの魅力をより感じてもらって、Jリーグの人気や認知の拡大につながればいいなという思いがあります。WINNER’Sでサッカーの魅力を感じ、人生の支えになってほしいですね。

人脈を駆使し大イベント開催。キング・カズも登場!

岩本:昨年末に日産スタジアムで那須さん主催のイベント「JAPAN ALL STAR 2021が行われました。お客さんが大勢入って、あのインパクトはすごかったです。

那須:1万人ぐらい来てくださいました。告知期間が2週間ぐらいしかなかったですし、WINNER’Sの各インフルエンサーのYouTubeチャンネルで告知するだけだったので、どのぐらい集まるか全く想像もつかなかったんですけど、あそこまでお客さんが入ってくれるとは思っていなかったです。

岩本:キャスティングもすごかったですよね。

那須:すべて僕が担当し、現役選手、OBを含めて44名ぐらいが参加してくれました。2週間ぐらいで集めたんですけど、電話連絡やLINE、メールなど、ずっと携帯電話を触りっぱなしで、その期間は生きた心地もしなかったです。

岩本:那須さんのサッカー選手としてのネットワークと、YouTuberになってからの人脈も含め、集大成のようなキャスティングでしたよね。カズさんまで来てくれて。

那須:あれはびっくりしました。ラモス瑠偉さんと風間八宏さんに監督をしていただいたんですが、3人でお会いした時に、ラモスさんが「那須、俺カズ呼ぶよ。お前のために」とその場で電話をしてくれて。そうしたら「OK出たよ」と。

岩本:嘘でしょ? 電話1本でOK出るんですか?

那須:はい。ラモスさんのおかげです。うれしい喜びでしたし、当日はしっかりゴールも決めてくれたので、さすがカズさん、と思いました。

岩本:Yahoo!のニュースでも取り上げられていましたからね。

那須:初めて失点で喜んでしまいました。素晴らしい、素敵なゴールでした。

岩本:WINNER’Sの今後の活動についてはどう考えているんですか?

那須:今、高校生など違うカテゴリーの方とも試合をしているんですが、大会などを開催して各カテゴリーの強化につながればいいなと思っています。Jユースとも練習試合や試合をしてお互いに切磋琢磨し、強化や人気の獲得につなげていきたいですし、ゆくゆくは海外のチームと試合をするなどグローバルな展開もできればいいなと思っています。

岩本:私がGMを務める南葛SCも何度かオファーを頂いているんですけど、スケジュールが合わなくて、まだWINNER’Sと試合ができていないんですよね。

那須:そうですね。何度かご連絡させていただいているんですが、タイミングが合わないということで。

岩本:でも、那須さんご自身のYouTubeチャンネルとはコラボさせていただいて、そのおかげで南葛SCのYouTubeの登録者数がすごく増えたんですよ。南葛SCの最初のコラボ相手が那須さんなので、われわれにとっての那須さんは、那須さんにとってのイニエスタ選手みたいな感じです。

那須:ありがとうございます。そう言っていただけるとめちゃめちゃありがたいです。

人の思いに関わり、価値に変えていきたい

岩本:話は変わりますが、YouTuberとして活動される中で、日本サッカー全体についてはどのように考えていらっしゃるんですか?

那須:各カテゴリーの強化の部分は年々レベルアップしていると思いますし、選手の強化は進んでいると思うんですけど、人気やスター性のある選手が少ない気がしていて、そういうものを備えた選手に多く出てきてほしいと思っています。そのためのきっかけ作りとして僕のYouTube活動があると思っています。

岩本:今の選手も実は個性的なんですよね。だけど、それをメディアで出す機会が減ってしまっているので、YouTubeを活用してそういったキャラクターをどんどん出していけば変わると思います。

那須:そうですね。今は多くの方がYouTubeを視聴していると思うので、それを手段として使って、個人やチームの人気が高まればいいなと思っています。

岩本:サッカー選手のセカンドキャリアについても伺いたいのですが、那須さんは「セカンドキャリア」という言葉があまり好きではないとお聞きしました。

那須:そうですね。「セカンドキャリア」と言われていること自体、サッカー選手は現役を引退してからもう一度キャリアを作らなければいけないと思われているんだな、と捉えています。一般社会で働いている方々には「セカンドキャリア」という言葉は使わないと思うので、そういう言葉がなくなるぐらい、現役を終えてからもスムーズな形で新しい何かにつなげられる選択肢が増えればいいなと思っていますね。

岩本:私もそれには同意見で、今、南葛SCでは選手兼正社員と業務委託選手が合わせて21名います。彼らはみんなサッカー選手をやりながら、営業や広報、マーケティングなど、南葛SCの仕事をしているんですよ。そうやっていれば選手を引退してもそのまま仕事ができますし、セカンドキャリアではないですよね。那須さんも現役の頃からYouTubeをしていて、それが今も継続されているので、「那須大亮のキャリア」としては一本化されていますよね。

那須:そうなんですよ。「引退したから何かをやらないと」というよりは、そのまま自然に移行していった感じですね。

岩本:実際そのキャリアを歩んで、ご自身の人生っていかがですか?

那須:楽しいですね。人の思いに多く関わることができていて、それが自分の原動力になっていますし、自分にとって一番優先度が高いものになっています。人の思いに関わりつつ、それを価値に変えるということに携われているのはすごく幸せに感じています。

岩本:最後に、那須さんの今後の夢、目標を聞かせてください。

那須:目標は現役を引退した時から変わっていないのですが、情熱と価値を同等に与えられるサッカー界にしたいと強く思っているので、僕自身の活動や、これから作り上げていくものによってそれを示していければいいなと思っています。

岩本:ありがとうございます。その目標を達成するためにも、南葛SCや『キャプテン翼』といろいろコラボさせてください。

那須:ぜひ、よろしくお願いします!

<了>

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JFN33局ネットラジオ番組「FUTURES」
(「REAL SPORTS」は毎週金曜日 AM5:30~6:00 ※地域により放送時間変更あり)
パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜、岩本義弘

Webメディア「REAL SPORTS」がJFNとタッグを組み、全国放送のラジオ番組をスタート。
Webメディアと同様にスポーツ界からのリアルな声を発信することをコンセプトとし、ラジオならではのより生身の温度を感じられる“声”によってさらなるリアルをリスナーへ届ける。
放送から1週間は、radikoにアーカイブされるため、タイムフリー機能を使ってスマホやPCからも聴取可能だ。
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