『キャプテン翼』の必殺シュート、実は野球がヒントだった! 高橋陽一が語る「リアル南葛

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2022.04.08

スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。この春からはJFN33局ネットの全国放送にリニューアル。元プロ野球選手の五十嵐亮太、スポーツキャスターの秋山真凜、Webメディア「REAL SPORTS」の岩本義弘編集長の3人がパーソナリティーを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。リニューアル後初の放送となる今回は、ゲストに『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生が登場。「ツインシュート」と野球との意外な関係や、元サッカー日本代表選手を4人も獲得して話題を集める南葛SCについて詳しく話を聞いた。

(構成=池田敏明、写真提供=JFN)※写真は左から、岩本義弘、五十嵐亮太、秋山真凜、高橋陽一

訪れた転機。「そろそろ南葛SCに本腰入れてやりますか」

秋山:今回は漫画『キャプテン翼』作者で南葛SC(※)代表の高橋陽一先生にお話をうかがいます。よろしくお願いします。(※南葛SC:将来のJリーグ参入を目指すサッカークラブ。現在関東1部<実質5部相当>所属)

高橋:よろしくお願いします。

秋山:この番組のパーソナリティーを務めるWebメディア『REAL SPORTS』編集長の岩本義弘さんは、南葛SCのGMとしても活躍されています。まず高橋先生との出会いについて教えてください。

岩本:出会いは2001年ですね。2002年に(FIFA)ワールドカップ日韓大会があったんですけど、その1年前に創刊したサッカー雑誌で「サッカーと漫画」という特集を組み、巻頭のインタビューが高橋先生でした。私自身、『キャプテン翼』の大ファンで、そこからサッカーにハマったので、漫画特集の巻頭は高橋先生しかいないだろうと。「絶対に自分が取材に行く」と言って取材に行ったのを覚えています。

秋山:その出会いから約18年後の2019年、『キャプテン翼』の主人公が小学生時代に活躍していたサッカークラブと同じ名前の「株式会社南葛SC」を設立されたんですね。

岩本:トップチームの株式会社化は2019年なんですが、サッカークラブの南葛SCに高橋先生が関わるようになったのは2013年からですね。もともとあったクラブの名前を「南葛SC」に変えたんですが、そのあたりの経緯は高橋先生からお話しいただいたほうがいいですね。

高橋:葛飾区は私の地元なんですが、もともと「葛飾ヴィトアード」という社会人チームがあり、そこの代表の方にサポートを依頼されまして。最初は後援会長のような形で入り、その後にチーム名が「南葛SC」に変わりました。

五十嵐:岩本さんをGMにした理由は何かあるんですか?

高橋:チームを強くするためですね。

五十嵐:でも、岩本さんはそれまでにGMの経験はないですよね?

岩本:ないですね。メディアの仕事しかほぼしていなかったので。ですが、メディアでGMの方や経営者の方に会う機会、インタビューする機会が多かったですし、世界中のサッカークラブの経営者の話を見聞きしていて、その知識があったことで結果として助けられていますね。

秋山:今となっては岩本さんが選手の獲得や契約更新など、すべて担っていますもんね。

五十嵐:オフシーズンとか、本当に大変そうでしたよ。ラジオでしゃべらなければいけないのに声が出なくなっていましたよね。

岩本:最初に高橋先生から「岩本さん、そろそろ南葛SCに本腰入れてやりますか」と言われた時は、こんなに早くやるのか、という感じはあったんですよね。でも、その時には高橋先生と一緒に『株式会社TSUBASA』を立ち上げていたので、断るという選択肢はゼロだったんですよ(笑)。

秋山五十嵐:(笑)。

岩本:「やりますか?」というより「やります」に近い感じで。

五十嵐:そんなプレッシャーをかけるような方に見えないんですけどね。

岩本:それは、まだまだ人を見る目が足りないかもしれないですね。高橋先生はまあまあ強めにプレッシャーをかけてきますよ(笑)。

五十嵐:こんな穏やかな感じで? 嘘でしょ? 岩本さんのほうがプレッシャーかけるじゃないですか(笑)。

岩本:そう思うじゃないですか。本当のプレッシャーは先生のほうが強いですよ。どうですか先生、自己分析してみて。

高橋:そうですね……(岩本さんの指摘が)当たっていないとは言い切れない(笑)。

「ツインシュート」「スライダーシュート」には野球の要素も?

五十嵐:『キャプテン翼』はサッカーをしていない人でも夢中になって読む漫画ですよね。僕も「ツインシュート」とか「三角とび」とか学校でやっていました。しかも、僕がちょうど小学生から中学生に上がる時にJリーグ開幕前でサッカーが盛り上がっていたんですよ。それまで野球をやっていた人がサッカーに流れて、僕もちょっと迷った時期がありました。

高橋:松坂大輔さんも「サッカーチームに入りたかった」と言っていましたよね。記事を読んで「ああ、そうだったんだ」と思いましたね。

岩本:高橋先生は野球選手の絵もけっこう描いているんですよ。

五十嵐:知ってます。僕、見てちょっと嫉妬しましたもん。東北楽天ゴールデンイーグルス時代の嶋基宏(現東京ヤクルトスワローズ)とか。

岩本:「キャプテン嶋」という企画でしたよね。北海道日本ハムファイターズ時代に大谷翔平選手(現MLB ロサンゼルス・エンゼルス)の絵も描いていますよ。先生は野球もお好きなので。

高橋:僕は野球少年だったんですよ。

五十嵐:え!

高橋:野球部だったんで。だから五十嵐さんに会えたのがとてもうれしいです。サッカー選手に会うより、野球選手に会うほうがちょっと緊張するんですよ。

五十嵐:スタッフもびっくりしていますよ。野球少年がどうしてサッカー漫画を描かれたんですか?

高橋:高校時代は野球部だったんですけど、1978年のワールドカップ・アルゼンチン大会をテレビで見て、そこからサッカーに興味を持つようになりました。

五十嵐:それからサッカー漫画を描くようになったんですね。いわれてみれば、サッカー漫画なのに野球の要素もある気がします。「ツインシュート」は左右から(大空)翼くんと岬(太郎)くんが同時に蹴って、無回転になるじゃないですか。野球でいうナックルボールなんですよ。ボールの回転やスピンなど、変化球の要素は一緒ですし、野球と通じるものがありますよね。

秋山:そういった部分は意識されていたんですか?

高橋:「スライダーシュート」とかも。

五十嵐:そうですよね。「カミソリシュート」とかもそうですよね。やっぱりそうなんですね。聞けてよかったです。めっちゃうれしいです。

「本当に入ってくれるの?」元日本代表を4人一挙に獲得

五十嵐:メディアから注目されるチームって、周りのチームは「何としても勝つぞ」という感じで挑んでくるじゃないですか。今でいうと“BIGBOSS”新庄剛志監督の北海道日本ハムファイターズですよ。あれだけ目立つと、周りのチームはちょっと面白くない気持ちもあると思います。南葛SCもそういうチームだと思いますが、それは感じますか?

高橋:そうですね、感じます。

秋山:南葛SCに入りたいという選手も増えているんじゃないですか?

岩本:補強の仕事は本当に楽になりましたね。以前は10人に声をかけて2人入ってくれればいいな、ぐらいだったのが、10人中5人が入ってくれる感じになりました。こんなに入ってくれるとは思っていなかったです。

五十嵐:普段は選手と話す機会は多いんですか?

高橋:そんなに多くはないですね。

岩本:選手たちは、高橋先生と話をする時はちょっと緊張する感じがありますね。そんなに気軽に会える感じではないじゃないですか。だから先生が練習試合を見にくると、緊張感があります。

五十嵐:戦略などについても話をするんですか?

高橋:GMやGM補佐に、気がついたところがあれば少し伝える感じですね。

五十嵐:一緒に仕事をされていて、意見の食い違いとかはないんですか?

岩本:言い合いはないですね。先生にいろいろと提案することはありますが、「これは先生、かなり強く思っているな」という部分はなるべく尊重します。

秋山:高橋先生が今シーズン、特に期待している選手を教えてください。

高橋:そうですね、やっぱり元日本代表の4人ですかね。

五十嵐:4人というと?

岩本:説明しましょう。まずは稲本潤一。一番ネームバリューがある選手で、ニュースでも大きく取り上げられました。それから今野泰幸、伊野波雅彦、関口訓充ですね。関口は代表歴こそ4人の中では一番少ないんですけど、昨シーズンはJ1クラブでレギュラーだった選手です。

秋山:稲本選手と今野選手が加入した時のニュースでの取り上げられ方、すごかったですよね。

五十嵐:高橋先生はこの4人を獲得できた時は、やっぱりうれしかったですか?

高橋:オファーを出しているのは聞いていたんですが、決まった時は「本当に入ってくれるの?」という感じでした。

五十嵐:その時は岩本GMに「よくやった」という一言はかけたんですか?

高橋:あ~、忘れちゃいました(笑)。

岩本:その時のリアクションで伝わっているので大丈夫です。

五十嵐:いいGMですね。でも言ったら喜ぶかもしれないので、改めてどうですか?

高橋:本当にありがとうございます。

岩本:はい。うれしいというか、照れますね。

五十嵐:われわれもうれしいですよ、岩本さんのこんな笑顔が見られて。

岩本:でも正直、(元日本代表選手を4人も)獲得できたのは私がどうこうではなく南葛SCの価値が上がってきたからです。一方で、FWでキャリアのある選手が獲得できていないんですよ。これには理由があって、通常は試合で途中交代できるのが3人なんですけど、コロナ禍の関係で5人まで交代できるルールが維持されているんですよ。そうすると(得点に絡むFWの選手は特に途中交代であっても)Jリーグで試合に出られる可能性が高いので、そうなるとなかなか下のリーグにはきてくれないんですよね。まだ諦めてはいないんですけど。

五十嵐:お話を聞いていると、頼もしいGMですよね。どうですか? まだ物足りなさは感じていますか?

高橋:いえいえ。岩本さんじゃないと務まらないと思っています。

岩本:今の言葉のほうがうれしいですね。

高橋先生がサードユニフォームをデザイン?

秋山:今シーズンのユニフォームは迷彩柄なんですよね。

岩本:普段はいくつかの候補の中から高橋先生が決めるんですけど、今回は2つに絞った後に「FiNANCiE(フィナンシェ)」というブロックチェーンを活用した新しいファンとのコミュニケーションツールで、クラブトークンを持っている人たちに投票してもらってデザインを決めました。

秋山:ファンの皆さんが選んだということなんですね。

五十嵐:でもそうなると、高橋先生がデザインしたユニフォームも見たいですよね。

岩本:そういうのもいいですね。いいアイデアいただきました。もともと漫画の中に出てくる南葛SCの白いユニフォームの要素を取り入れていて、白を基調にしているんですよ。でも確かに、高橋先生がデザインされて、それを全世界に向けて発信できたらいいですよね。

秋山:絶対にみんな着たいと思いますよ。

高橋:サードユニフォームでやりますか。

岩本:あ、いいですね。すぐに担当者に、サードユニフォームのデザインは高橋先生がすると伝えておきます。サードユニフォームには、世界中のクラブがいろいろな遊び心を入れていて、サードユニフォームが一番カッコいいところが多いんですよ。最近はプロ野球でもいろいろなユニフォームをつくっていますよね。

五十嵐:ありますね。イベントで着るユニフォームをつくって、それを来場者に配ったりもするんですよ。

岩本:あのイベントはいいですよね。たまにJリーグでもやりますけど、1日限定のユニフォームもいいですね。

全試合無料? “J3レベル”の関東1部での頂上争い

秋山:関東サッカーリーグ1部での戦いに高橋先生が期待していることを教えてください。

高橋:やっぱり結果ですね。カテゴリーが上がって、全体的なレベルも高いですからね。

岩本:関東1部はJ1から数えて5部に相当するリーグなんですけど、そこで優勝争いできるようなチームは、J3リーグに入っても普通に戦えるぐらいのレベルだと思います。日本サッカー全体のレベルが上がっていますからね。

五十嵐:それはどういう部分を見て感じるんですか?

高橋:関東1部はアマチュアのカテゴリーなんですけど、南葛SCだけではなく、他のチームにも元プロの選手がいますし、大学サッカーの強豪校で4年間みっちりトレーニングしてきた選手たちが入ってくるのも大きいと思います。

五十嵐:今後はスタジアムや施設も整備していく予定なんですか?

高橋:そうしたいですね。

岩本:葛飾区にスタジアムができた場合は、世界中のレジェンドを招いてエキシビションマッチでこけら落としをするつもりです。そのシーンを見ることができたら、私はGMをやめてもいいかな、と思っています。それを実現させるまでは頑張りたいなと。

五十嵐:世界のトッププレーヤーには『キャプテン翼』を見ていた人が多いから、そういった選手も来てくれるでしょうね。

秋山:ファンの皆さんも、コロナ禍じゃなかったら絶対に試合を見にいきますよね。今シーズンも非常に楽しみですね。

岩本:お二人もご招待するので、ぜひ見にきてください。幸いなことに、今シーズンは有観客で試合を開催できるようになったので。

五十嵐:そうか、満員でもOKになりましたもんね。稲本選手は僕と同い年なので、ぜひ応援に行きたいですね。

岩本:ホーム開幕戦は4月10日です。芝生席も開放しますので、1500人ぐらい入ると思います。いろいろなイベントも実施予定ですし、YouTubeの中継もありますので、ぜひチェックしてください。ホームゲームに来ていただけるとうれしいです。

秋山:チケットの料金はおいくらなんですか?

岩本:なんと今シーズンは、全試合、無料です。

秋山:全試合無料ですか?

岩本:コロナ禍の影響で、無観客試合になってしまう可能性もゼロではないじゃないですか。そうなると返金対応などが大変なので、今シーズンは無料で見ていただこうと。ただし事前の申し込みが必要になります。

秋山:ホームゲームは9試合しかないので、早めに南葛SCのホームページをチェックしてください。最後になりましたが、プロのサッカー選手を目指す子どもたちに向けて、高橋先生からのメッセージをお願いします。

高橋:スポーツはサッカーに限らず、楽しむことが一番大事だと僕は思っているので、楽しくボールを蹴ってほしいですね。うまくなったほうが楽しいだろうし、強くなったほうが楽しいと思うので、楽しみながらスポーツをしてほしいなと思っています。

<了>

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JFN33局ネットラジオ番組「FUTURES」
(「REAL SPORTS」は毎週金曜日 AM5:30~6:00 ※地域により放送時間変更あり)
パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜、岩本義弘

Webメディア「REAL SPORTS」がJFNとタッグを組み、全国放送のラジオ番組をスタート。
Webメディアと同様にスポーツ界からのリアルな声を発信することをコンセプトとし、ラジオならではのより生身の温度を感じられる“声”によってさらなるリアルをリスナーへ届ける。
放送から1週間は、radikoにアーカイブされるため、タイムフリー機能を使ってスマホやPCからも聴取可能だ。
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