上田綺世と同じ名門・フェイエノールトでの戴冠。19歳・板村真央が掴んだリーグMVP

Career
2026.06.03

2025年1月にJFAアカデミー福島からフェイエノールトへ加入した板村真央は、加入2シーズン目でオランダ女子1部リーグ年間MVPに輝いた。初めてフルシーズンを戦い抜いた今季は、リーグ戦20試合でチーム最多の8得点を記録。フェイエノールトも昨季の5位から3位へ順位を上げ、クラブ史上初の欧州大会予選出場権を獲得した。男子トップチームでは上田綺世が得点王となり、日本人選手の存在感が高まる名門クラブで、19歳のアタッカーは何をつかんだのか。MVP受賞の手応え、フェイエノールトでの成長、そして10代で海外に渡った決断について聞いた。

(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=ANP Photo/アフロ)

キャプテン投票で選ばれた年間MVP

――オランダ女子1部リーグ年間MVPを受賞しました。12クラブのキャプテン投票で選ばれた賞ですが、受賞の率直な気持ちを聞かせてください。

板村:オランダで自分のプレーが評価されたことは、本当にうれしく感じました。全チームのキャプテンが投票して選んでくれたということは、シーズンを通して、毎試合自分の存在感を出せていたのかなと思います。

――授賞式の場に立った時、どんな景色が印象に残っていますか?

板村:緊張しましたね。オランダサッカー界のトップクラスの有名な選手もたくさんいました。その場に立てたことがすごくうれしかったですし、新鮮でした。

――加入2シーズン目でMVPに選ばれました。どの部分を評価してもらえたと感じていますか?

板村:監督から信頼してもらって、チームの中心選手として試合に出させてもらえたことは大きかったと思います。その中で周りやチームメートのサポートもあり、自信を持ってシーズンを通してプレーできました。得点やアシストという結果を残せたことも大きかったと思います。

――今季はリーグ戦で8得点6アシストという数字を残し、チーム内得点王となりました。この数字はどう受け止めていますか?

板村:正直に言うと、今シーズンの目標は二桁得点でした。最初のほうにあまり点が取れなかったので、物足りなさも感じています。

トップ下で磨いた、仕掛けと得点への意識

――フェイエノールトでは前線の選手としてプレーし、U-20日本女子代表では2列目でもプレーしています。自身では、得意なポジションや役割をどう捉えていますか?

板村:自分の得意なプレーは、ゴール前でのプレーや、ドリブルで仕掛けてゴールやアシストに直結するプレーです。今はトップ下のポジションでプレーしていますが、そこではゴール前のシーンだけでなく、間で受けて攻撃の起点になることも意識しています。オランダに来て、自分の武器が海外の選手にも通用すると感じたことで、もっと攻撃的な選手になりたいと思うようになりました。ストライカーやトップ下は、自分がやりたいポジションです。

――自分の武器として一番通用すると感じたプレーは何ですか?

板村:ドリブルで仕掛けて、そこからシュートまで持っていくプレーです。ドリブルから点を取ることは、自分の武器だと思いました。相手との駆け引きは感覚的にやっている部分が多いのですが、最初は相手のリーチの長さに戸惑う部分もありました。その中で、どの距離なら仕掛けられるのか、どのタイミングで外せるのかは少しずつつかめてきたと思います。

――一方で、今シーズンを通して伸ばさなければいけないと感じた部分はありますか?

板村:攻撃では、ドリブルで仕掛ける回数をもっと増やして、チャンスを作りたいと思いました。あとはゴール前でのクロスへの入り方や合わせ方など、点を取るために必要なことがまだあると学びました。日本と比べると攻守にスピードがあるので、スプリントを何回もできる力など、フィジカル面はもっと高めていかないといけないと思いました。

体格差をかわす駆け引きと、日本人同士の連係

――オランダの選手と対峙する中で、体格や当たりの強さに日本との違いを感じる部分はありますか?

板村:日本に比べて、体をしっかり当てにくるところは大きな違いを感じました。ファウルでもファウルじゃなくても、ガツンと当たりにきます。ただ、相手のほうが体が強い時は簡単にボールをはたいてシンプルにプレーしていますし、当たらずにできるなら、当たらずにプレーしたいです。コンタクトを避けられない場面もあるので、そこは負けないように、フィジカルトレーニングも続けていくことが大切だと思っています。

――フェイエノールトには竹重杏歌理選手、岩﨑心南選手も所属しています。連係面で、日本人選手がいることのやりやすさや、プレー感覚が近いと感じる部分はありますか?

板村:試合中でも日本語で声を掛け合えて、スムーズにコミュニケーションを取れるのは大きいです。特にポジションが近い心南さんとは近い距離でワンツーをしたり、細かく崩したりする場面でやりやすさがあります。心南さんはベレーザ出身でサッカー観が近いからか、やりたいことや意見が合うことが多いです。

――靴磨きパフォーマンスや手のサイン、スピードスケートの動きなど、ゴール後の多彩なパフォーマンスも印象的でした。何をするか、チームメートと一緒に考えているのですか?

板村:そうです。チームメートと毎試合前に「何をする?」という感じで考えていました。ルームメートの選手なので、家で一緒に考えて、試合でゴールを決めた時にやっています。

5位から3位へ。欧州への扉を開いたシーズン

――フェイエノールトは最終節のNACブレダ戦に勝利し、クラブ史上初の欧州大会予選出場権を獲得しました。チームとしても大きな意味があったのではないですか?

板村:今シーズンの目標は3位に入ること、FCトゥウェンテやPSV、アヤックスのような上位チームに勝つことが目標の一つでした。最終的に3位で終えられたことは、チームとしてもすごくうれしかったです。フェイエノールト女子として初めて欧州大会につながる順位に入れたことは、クラブにとっても大きな一歩だと思います。

――昨シーズンの5位から2つ順位を上げました。チームの成長をどこに感じていますか?

板村:昨シーズンは、途中に加入したのでプレーしたのは半年だけでしたが、上位のチームに負けて突き放されることが多かったです。今シーズンはそこで何とか耐えて、特に後半戦はホームで上位チーム相手に引き分けたり、首位のFCトゥウェンテ戦に勝ったりして、最後まで3位争いについていけたことが良かったと思います。

――フェイエノールトというクラブや、オランダのサッカー熱についてはどんな印象を持っていますか?

板村:フェイエノールトのサポーターは熱狂的だとよく聞きます。男子のアヤックス対フェイエノールトの試合時などは、危険な雰囲気になってしまうので、アウェーサポーターの席を用意しないぐらいの試合になることもあると聞きます。それくらい、サッカーに対して熱量のあるクラブだと思います。男子の試合を見に行くこともあるんですが、いいプレーはみんなで喜び、悪いプレーにはブーイングをする。どちらにも大きな反応があって、それが一体感として伝わってくる感じがあります。ただ、女子の試合は比較的穏やかです。

JFAアカデミーから名門へ。日本人選手たちが示す道

――高校卒業時に、JFAアカデミー福島から直接ヨーロッパに渡る決断をしました。海外挑戦を決めた理由は何だったのですか?

板村:世界で活躍する選手になりたいという目標がありました。(古賀)塔子さんや(谷川)萌々子さん、その上の先輩たちも海外に挑戦していたので、自分も早い段階で挑戦したいという強い気持ちがありました。

――WEリーグに進む選択肢もあったと思います。10代で海外に出ることに不安はありませんでしたか?

板村:決めた時はあまり迷いはありませんでした。ただ、いざ移籍すると決まった時は不安もありました。塔子さんはなんでもしっかりこなすので、その姿が刺激になりましたし、自分も頑張ろうと思いました。言葉でアドバイスをもらうというよりは、背中を見て学ぶことが多かったです。

――同じフェイエノールトで、上田綺世選手が男子リーグの得点王になり、板村選手が女子リーグMVPを受賞しました。同じクラブで日本人選手が評価されたことをどう感じていますか?

板村:男子の試合を見に行った時は上田さんに期待して、応援していましたし、得点王になったことは本当にすごいことだと思います。日本人がオランダに来て活躍し、評価されていることは、同じ選手としてすごくうれしいです。

――同じアタッカーとして、上田選手のプレーから刺激を受けた部分はありますか?

板村:上田さんはゴール前で仕事をする、点を決める職人のようなストライカーです。動き出しの部分は、試合でもよく見ていました。何回か、一緒にインタビューを受ける機会があったのですが、練習場やクラブハウスも違うので、直接話す機会はあまりないです。

――男女で日本の選手が活躍しているオランダリーグの魅力を伝えるとしたら、どんなところですか?

板村:オランダの人たちは気さくでオープンな国民性なので、すごく暮らしやすいです。サッカーの部分では、フィジカルの強い相手と日々対峙できるので、自分にとってはすごく成長につながる環境だと思います。オランダに来て良かったと思っています。

【連載後編】オランダMVP・板村真央が磨く世界基準。冨安健洋、毎熊晟矢のアドバイスに学ぶ“嫌なFW像”

<了>

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[PROFILE]
板村真央(いたむら・まお)
2006年8月6日生まれ、広島県出身。フェイエノールト所属。ポジションはFW。JFAアカデミー福島14期生。両足のキック、鋭いターン、スピードに乗ったドリブルを武器に、2022年にはなでしこリーグ2部で13得点を挙げ、得点王と新人賞を受賞した。2024年のFIFA U-20女子ワールドカップでは飛び級でメンバー入りし、準優勝を経験。2025年1月にフェイエノールトへ加入し、2025-26シーズンはリーグ戦20試合でチーム最多の8得点を記録し、オランダ女子1部リーグ年間最優秀選手賞を受賞。U-20日本女子代表では背番号10を背負い、2026年のAFC U-20女子アジアカップ優勝に貢献した。

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