鹿島で岩政が学んだブラジル的「結果論」。世界に学んだ日本代表が見つける本当の個性――中西哲生×岩政大樹

Opinion
2026.06.18

いよいよ開幕した北中米ワールドカップ。強豪・オランダ相手に、二度の先行を許しながら引き分けた日本代表の戦いぶりは、改めて世界を驚かせている。久保建英選手のパーソナルコーチとして知られる中西哲生氏は先日発刊した著書『日本サッカーはどこまで強くなるか 日本人の体格を武器に変える身体操作(青春出版社)』の中で、日本代表は「世界から学びつつ、独自のサッカーを構築する時代に入った」と、今大会が日本サッカーの転換点になると予想する。今回は日本の新たな挑戦となる北中米ワールドカップ開幕に合わせて、元日本代表DF、岩政大樹氏を迎えた対談を企画。理論派DFとして日本代表の守備を担い、現在は東京学芸大学蹴球部を率いる岩政氏と中西との接点、そして両者が触れた「世界」と、そこから得た、日本が次のステージに向かうためのヒントとは?

(構成=大塚一樹、写真=大橋賢)

「足りないもの探し」の時代は終わった。日本人ならではの特性とは?

――お二人は、久しぶりの顔合わせだそうですね。

中西:お互い、自分の道を全力で行くタイプなので、なかなか交わる瞬間がなくて。最初に会ったのは、岩政さんが現役の頃、鹿島に取材に行った時です。話をして、ここまで論理的に考えてプレーしている選手がいるんだな、と思いました。僕は、岩政さんの影響も受けているんですよ。彼の生き方も含めて、日本のサッカー界にとってかなり稀有な存在だと思っています。

岩政:僕は現役時代、哲生さんに相談して身体操作を教わって、そこからプレーがガラッと変わった人間です。久しぶりにお話しできるので、今日はうれしいです。

――その中西さんが今回、『日本サッカーはどこまで強くなるか』 を上梓されました。ワールドカップ開催中ということもあり、この本の中で語られている日本代表の新たな可能性について、いわば“中西メソッド”の体験者である岩政さんと語り合ってもらおうと思っています。岩政さんの現役時代に伝えていたことと、今、久保建英選手らと実践していることは、つながっているのでしょうか。

中西:立ち方や姿勢については、完全に同じことを伝えています。岩政さんに伝えていた頃、すでに長友佑都選手に教えていることとの連鎖があって、それが積み重なって体系化され、今につながっている。その頃から言っていることは大きく変わっていないのですが、その根拠として日本の伝統や文化、日本人ならではの特性や特徴、思考や性質があることがだんだん分かってきました。日本サッカーは海外に学んで成長してきた。もちろん優れた点はこれからもどんどん取り入れるべきですが、新しい景色、ワールドカップ優勝を目指すなら、日本人しかできないこと、特徴を生かしたサッカーをする必要があると思っているんです。

岩政:本も読ませてもらって、本当にその通りだなと思います。現場でもその実感はあります。「日本には何が足りないか」を外ではなく自分たちの中に探す時代がきたというのは、僕が現役の頃から考えてもすごい変化ですよね。

世界トップとの遭遇。ストイコビッチが教えてくれた「スキル」

中西:僕は中学の時にアメリカに住んでいたんですが、向こうのコーチがサッカーの技術のことを「スキル」と呼んでいたんです。テクニックとスキルは違う。そこは明確に分けて、試合の中で発揮できるものがスキルだって。オランダ人だったと思うのですが、そんなことを言っていて、言葉の上のことですけど、僕は初めからテクニックではなくスキルという言葉を使っていたというのは大きかったんです。

――中西さんはテクニック+思考がスキルだとおっしゃっていますね。

中西:なぜそんな話をするかと言うと、それが自分の中で完全にクリアになったのが、名古屋グランパスで(ドラガン・)ストイコビッチに出会った時だったんです。それが僕が初めて世界のトップクラスに触れた経験でした。みなさんもご存じの通り彼はとてつもないテクニックを持っているけれど、それを試合中に効果的に使う頭があるから、さらにすごい。

 面白いのは、グランパスの選手たちが毎日ストイコビッチを見ているうちに、みんなだんだんストイコビッチっぽくなっていったこと。人間のミラーリング能力ですよね。僕も試合で、ストイコビッチっぽい切り返しからアシストしたことがあって、本人に「俺の真似してるだろ」と言われたことがありました(笑)。

 そしてそのタイミングで今度は監督として、(アーセン・)ベンゲルが来た。ストイコビッチを完璧にコントロールできる監督が。めちゃくちゃ信頼しているからこそ、厳しいこともはっきり言う。世界のトップ・オブ・トップの2人の関係性を目の前で見られて、僕はたまたま英語が話せたから、二人の会話も理解できた。特にストイコビッチとはいつも同じテーブルでご飯を食べて、「ワールドカップってどうなんだ」と、世界を知る選手の頭の中を聞くことができた。本当に運が良かったと思います。

岩政:僕がヨーロッパに触れたのは、イタリア流の戦術。日本代表でのザックさん(アルベルト・ザッケローニ監督)ですね。とにかく細かく決まり事を確認していくんです。一日中ピッチの上で、ホワイトボードを使ってみんなに説明する日があって、身体を動かしていないから寒い(笑)。でも、僕はもともと守備戦術とかが好きだったので、楽しかったです。イタリアはこういうふうにやるんだな、と。

 ザックさんのサッカーは、守備は約束事が多くて、体の向きまで細かく要求される。世界のサッカーがどこまでをどう説明していて、どう成り立っているのか。想像ではなく実体験で学べたことは大きかったです。「監督がこういう指示をしているから、こういう現象が起きるんだな」とつながるようになりました。

結果がすべて。鹿島で体感した「ブラジルの結果論」

――ヨーロッパサッカーという意味ではザッケローニさんが最初の接点ということでしたが、岩政さんが長くプレーした鹿島アントラーズは、伝統的にブラジルの哲学が根づいたクラブです。

岩政:ブラジル人は、結果に対する意識が別格なんです。日本人は良くも悪くも過程を大事にするじゃないですか。負けた時に、原因を分析して改善していこうという目線になる。僕もそれが大事だと思っているし、今もそれは変わっていません。でも、まったく別のところからブラジル人の思考が持ち込まれた時、ものすごい刺激でした。

 例えばある試合で、僕がマークに付いていて、横の選手がマークを外されて失点した。ミーティングで「お前、カバーできただろ」と言われるわけです。それで次の試合、同じような場面でカバーに行ったら、今度は自分のマーカーにやられて失点して、「お前、なんで付かなかったんだ」と平気な顔で言ってくる。この前の理論で言ったら俺のミスじゃないだろう、と腹が立つんですけど、彼らは全くブレない。守れていれば、何でもいい。すごくイライラするんですが、同時に「その発想で動いている人たちなんだ」と。勝ち負けから全然ブレないところは、ものすごく刺激的で面白かったです。

中西:結果が何よりも大切。それが彼らの文化なんですよね。

岩政:そうなんです。そして最終的に守備は、瞬間的にどちらの危険を消すかの判断になります。カバーに6割でマークに4割残すのか、7対3にするのか。五分五分は基本的にないんです。こっちの選手は外す技術が高いかもしれない、こっちの選手のシュート技術より、こっちのターンの技術のほうが怖いかもしれない。対峙する相手の能力、自分の対応力、後ろにいるキーパーの能力まで含めて、その比率を瞬時に総合計算する。ブラジル人は、その読みにめちゃくちゃ長けている。正解がひとつじゃないサッカーで、確率の掛け方と直感がすごい。僕はそれに何度も驚かされてきましたし、結果論の理不尽さに憤る以上に、その直感力を論理的に磨かなきゃいけないと思わされました。

中西:守備は確率論なんですよ。数学的な発想です。サッカーの攻撃のやり方は時代とともに変わってきましたけど、守備は大きくは変わらない。相手がこちらに来る確率が7割なら、7割の心づもりでどちらにも動けるように左右に均等に体重をかける。3割しか可能性がないと思っていても、必ず両方に行ける状態を残しておく。岩政さんとは現役時代、まさにそういう話をずっとしていました。

岩政:ブラジルの読みは、ロジカルに育成されたものとは思えないんです。結果がすべてという文化、あの結果論の中で磨かれてきた確率論なんですよね、きっと。戦術的な論理も重要だけど、ブラジルのそういうエッセンスもサッカーには必要で、いろんな要素が入ってくるから、サッカーは面白い。

外に学び、内に還る。岩政大樹を変えた「真逆」の身体操作

――守備のところで、岩政さんの現役時代に中西さんとどんな話をしていたんですか?

岩政:プロ入りして2、3年目くらいの頃ですかね。僕は大学で学んだ「全体を動かして戦術で守る」ことでプロになれたと思っているし、それを身につけたことでアントラーズでも比較的早い段階で試合に出ることができました。でも、日本代表に選ばれてそこでやっていきたいとなったときに、それだけじゃ突き抜けられないと思ったんです。

 まず考えたのは、自分一人で守れる範囲をもっと増やさないといけないということ。それで哲生さんに相談したんです。

 教わったのは、立ち方や姿勢、身体操作というベースの部分です。聞けば聞くほど、自分が良いと思ってやってきた動きが、全部真逆だった。重心を低く構えていたのを「高くしてください」と言われて、やってみたらたしかに高い方がスムーズにすばやく動き出せた。だったら全部真逆にしてしまえば、全部良くなるじゃないかと思ってやってみたら、本当に身体の動きが良くなったんです。守備の対応も、パスも、コントロールも、ビルドアップも全部良くなりました。

中西:明らかにすぐに良くなったんだよね。そういう変化は、個人だけでなくチームにも影響を与えるんですよ。一緒にやっている選手はすぐに気が付く。「何か変えたよね?」って。

岩政:DFは、ほんの微妙なところでボールに触れるか触れないかで、チームの安心感が全然違うんです。それが触れるようになったので、チーム内での信頼感が目に見えて変わりました。4年目でJリーグで優勝して、代表にも入っていった。あれは大きかったですね。

中西:変わったのは、やっぱり本人の中に「変わりたい」という思いがあったからですよね。「もっと良くなるためには」を常に持っている人しか、従来のやり方を変えられないし、変わることもできない。岩政さんは最初から空のコップを持って「水をください」と差し出してくれる人だった。だから身体操作の論理を話せば、ストンと腹落ちする。そういう意味では、岩政さんには日本人の精神性やいろいろな理論は必要なかった。説明しなくても自分で理解して、僕の言葉を編集して活用していた感じです。

岩政:でも、哲生さんに紹介いただいた本はほぼ全部読んでいますよ(笑)。日本にずっとある精神性や文化を、日本人として大事にしなきゃいけない。その感覚は、僕も哲生さんから受け取ったものだと思っています。

「日本にはマリーシアが足りない」は、もう古い

――岩政さんがブラジル人選手の結果論に学びを見出したように、世界との違いを知ることは大きな進歩になり得ます。同じように、主にブラジルから「日本も学ぶべき」という話で必ず出てくるのが、マリーシアです。日本語にするのは難しいのですが、ある種の狡猾さがないと世界では勝てない、という論調は昔から根強くあります。

岩政:僕は、サッカーの世界が逆転してきたと思っています。ブラジルにはマリーシアがある、スペインはこうだ、ドイツはこうだ。だから日本には「これが足りない」と外から取り入れる。その文化自体は日本の良さでもあったと思うんです。でも、「足りない、足りない」と言い続ける時代が、ようやく逆転したと思っているんです。日本は日本のやり方を追求し、日本にあるものをより深めていくことで対抗できるところまで来た。欧州・南米の強豪国を除けば、これだけの選手を5大リーグに送り出している国はほとんどありません 。だから僕も、世界中を学ぶべきだと思っていたところから、日本にあって他にないものを探したほうがヒントがある、と考えるようになりました。マリーシアも同じです。「向こうがやっているから」という発想は、もう必要ないと思います。

中西:僕は一貫していて、単純に嫌いなんです。正しく生きたい。ベンゲルがよく「こんなに他人のことを考えられる国は日本しかないよ」と言っていたんです。

 今日もここに来る途中の駅の構内で、若い夫婦がベビーカーを抱えて階段を上ろうとしていたんです。少し離れていたのですが、手伝おうと踏み出すと、先に若い女性が手助けして階段を上っていたんです。日本ではそれが普通に起きる。

 ベンゲルもこういう光景を目にするたび、ヨーロッパの個人主義を嘆いて、日本は素晴らしいと言っていました。彼が一番影響を受けたのは日本なんです。

 マリーシアも、単にズルをしなさいという意味ではない、もっと深い駆け引きを意味していることは理解していますが、僕は、こうした日本人の性質、心根がマリーシアを絶対に超えると思っています。そういうサッカーの価値が必ず来る。そうなったら世界が変わる。日本が世界の価値観を変えるんです。馬鹿正直で、愚直なくらいでいい。

最後のピースは「阿吽の呼吸」?

――守備は確率論として整理できる。では攻撃に「日本らしさ」はあるのでしょうか。

中西:正直に言えば、そこだけがまだはっきりとは見つかっていないかもと思っているところなんです。今日話に出てきたブラジルなら、最後は全員が「自分がゴールを決める」と思ってプレーする。決まれば全員が納得するし、全員が自分が決めると思ってプレーするから相手DFも予測しづらい。では、日本が一番ゴールを陥れる確率の高い、日本らしいゴールの仕方とは何なのか? 守備はある程度見えている感覚があるのに、攻撃の最後のそこだけは、論理として構築しきれていない。

 今回この本を出すにあたって、自分がヒントをもらった場所を全部回り直したんです。出雲大社、伊勢神宮、法隆寺……。御礼も兼ねて改めて何か学びはないかと各所を回ったのですが、攻撃の日本的な落とし所だけは、まだひらめかない。だからそれが、この後の自分がやらなければいけないことだと思っています。

岩政:僕は結局、阿吽の呼吸になるんじゃないかと思っているんです。つながりを重視しながら崩す。だから僕は、先回りしてパターンで教え込むことは絶対にやらない。今、その仮説を立てて自分が監督を務めている東京学芸大学の現場で毎日取り組んでいるところです。

中西:阿吽の呼吸ね。そうかもしれない。僕がアドバイザーとして関わっている筑波大蹴球部の4年生に、小林俊瑛というFWがいます。必要なときに強引にでもシュートを打ちにいける、いいストライカーなんですが、彼にはポストプレーに関するアドバイスをずっとしていました。


「中盤から入ったボールをディフェンスを背負ってMFに落とすプレーは誰でもできる。斜め前の選手にボールをフリックできる選手になってくれ」

 彼の意図としては、MFに落として自分が前を向いてリターンをもらいたい。自分がゴールを決めるためのプレーということなんですが、一番マークされている選手だからこそ、ワンタッチで斜め前にボールを流すような動きをしてほしかった。ボールを少しでも前に進めるフリックができれば、ボールをもらった選手に時間とスペースが生まれます。そういうプレーをしていれば、最後は必ず自分にボールが戻ってきてシュートチャンスが生まれるからとずっと言い続けていたんです。

 ボールを受けたらまずゴールのことを考えるような選手だからこそ、本人の中では、ずっと腹落ちしていなかったと思います。でも、昨年のインカレの準決勝で、僕の言っていたようなシチュエーションがあったんです。

 小林選手が味方にフリック、受けた選手はループシュートを放った。DFが戻ってギリギリでクリアしたんですけど、そのボールはフリックの後ゴール前に走り込んでいた小林選手の目の前に。あとは押し込むだけでした。

誰かのために動くと、最後にチャンスが自分のところに巡ってくる。サッカーでは、そういうことが起こるんです。

岩政:DFなら100回カバーに行って99回は無駄でも、その1回のために行けるかどうか、ですよね。

中西:そう。「情けは人のためならず」という言葉がありますが、利他の精神は決して自己犠牲ではない。互いを信頼して、互いの力を前提に動くことです。世界のサッカーの中で輝ける日本の特徴は、きっとこういう感覚の中にある。世界に学んできた日本が探していたものは、実は自分たちのすぐ近くにあった。答えは外ではなく、内側にあるんです。

日本優勝の可能性は?

――では、改めて伺います。森保一監督は今大会の目標として「優勝」を公言しています。現実的にはまずはベスト8という見方もあると思います。お二人はどう考えていますか?

中西:僕は2000年代の中盤くらいから、ワールドカップ優勝からの逆算でいかないと優勝はない、とずっと思ってきました。「できる」と断言しているのではなくて、もしできるとすれば、こういう可能性はあるだろうという逆算で考えたい。今大会もそういう考えから、森保監督が優勝を公言しているのは素晴らしいことだと思うし、僕もそこにコミットしたいと考えています。

 とはいえ、ただの願望とか賭けではないんです。欧州のクラブシーンや強豪国の親善試合、世界のサッカーを見た上で「本当に優勝できるのか」と問われたら、もちろん厳しい。ワールドカップ優勝となると単に実力だけではない“何か”があるのは間違いありません。ただし、今大会は、これまでとは明らかに違う。

 ワールドカップでどこまで戦えるか? という問いに対しては、僕の中で「優勝経験国に勝てるか」という基準があります。以前、久保建英選手とも「優勝経験国に対してはワールドカップ前に一度は勝っておかないといけない」という話をしたことがあります。昨年10月にブラジルに勝ち、今年3月にはイングランドにも勝った。これでワールドカップ優勝経験のある8カ国のうち、日本は7カ国に勝ったことになります。ちなみに勝っていないのはイタリアだけで、そのイタリアは今大会に出てこない。だから初めて、勢いに乗れば優勝できるかもしれない、という可能性を本当に感じられる大会なんです。

岩政:僕は基本的に慎重な人間で、突拍子もないことはあまり考えないタイプなんです。正直、日本がワールドカップを勝ち上がっていく姿は、あまり想像してきませんでした。でも最近の日本代表を見ていると、実際に強い選手が揃っていますし、強豪国と比べて明らかに劣っているかというと、そうでもないレベルに来ている。多くのサポーターと同じ目線だと思いますが、客観的に見たら普通に強いな、優勝の可能性も少しあるんじゃないか、と思えるようになってきたのが今の日本代表だと思います。

――三笘薫選手、南野拓実選手など、主力級のケガもあります。優勝の可能性は高まったが、苦戦も常にあり得るのがワールドカップですよね。

中西:率直に、前回大会のスペイン戦で大活躍した三笘選手の不在は本当に痛いです。サッカーの実力はもちろんですが、彼は戦っている集団の空間をピリッとさせる空気感を持てる選手なんです。ピッチの内外で、彼を失ったことは大きい。ただ、一番辛いのは本人です。南野選手もそうですが、‟違い”を出せる選手の不在の影響はやはり大きいでしょう。

岩政:相当苦しいですよね。現場で考える人間からすると、あそこまで一人で「剥がせる」選手は他にいない。かわせる選手はいるんです。でも三笘の場合、剥がし切ることで局面を打開して、チームに勢いをもたらしている部分がかなりあった。みんなあまり意識していないけれど、チームもある程度「彼がいる前提」で作られてきたところがあるので、客観的に見ると痛い。ただ、言ってもしょうがない。それがチーム作りに好転することもあるし、他の選手たちも十分に能力のある選手たちなので、期待をかけるしかないですね。

中西:今回、田中碧選手が三笘の背負ってきた背番号を、久保選手が南野選手の番号を背負いますよね。離脱した選手たちの思いを持っていく。今の日本代表は、失ったものや足りないものを嘆くのではなく、突出した個を集団で補う、違う方法論でより良いものを追い求める、そんな対応ができるチームではないかと思ってるんです。出られなかった選手の思いがまた違った力になることを願っています。

 ワールドカップで優勝したことがあるのは、世界でまだ8カ国だけです。日本が9カ国目になるためには、誰かのコピーではなく、日本だけのカラーを見つけるしかない。学ぶ時代は終わって、内側から湧き出てくるものと向き合う時が来た。この大会で、その入り口が見えるかもしれないと、僕は本気で思っています。

(※この対談は北中米ワールドカップ開幕前に行われました)

<了>

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[PROFILE]
中西哲生(なかにし・てつお)
1969年生まれ、愛知県出身。名古屋グランパスエイト、川崎フロンターレでプレーし、2000年に現役引退。スポーツジャーナリストとして活動する傍ら、パーソナルコーチとして久保建英ら多くの選手を指導。筑波大学蹴球部アドバイザーも務める。著書に『日本サッカーはどこまで強くなるか』など。

[PROFILE]
岩政大樹(いわまさ・だいき)
1982年生まれ、山口県出身。東京学芸大学から鹿島アントラーズに加入し、リーグ3連覇などに貢献。元日本代表DF。引退後は鹿島アントラーズ、北海道コンサドーレ札幌などで監督を歴任し、2026年から東京学芸大学蹴球部監督を務める。

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