本田圭佑が目指すリアル「サカつく」 ONE TOKYO代表が探る理想のチーム創りとは?
本田圭佑選手と共に、2010年から数多くのスポーツビジネスを国内外で展開してきたパートナー、鈴木良介。「東京から世界に影響を与えられるサッカークラブをつくりたい」、そして「そのサッカークラブをみんなと一緒につくりたい」という意思のもと、サッカークラブ「ONE TOKYO」を新たに設立した。まさに、リアル「サカつく」を体現した夢のようなチームとして注目が集まる中、彼らが目指す“チームづくり”の基盤とは?
(※本インタビューは、2020年2月26 日に行われました)
(インタビュー=岩本義弘[『REAL SPORTS』編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、撮影=大木雄介)
リアル「サカつく」が未来のサッカーへもたらす可能性を感じた
――まず、ONE TOKYOのクラブ立ち上げの経緯から教えてください。
鈴木:もともと、2010年から本田(圭佑)とサッカースクールも含めてずっと一緒にやってきた中で、最初の頃からこの構想はありました。われわれのサッカースクールが少しずつ定着してきた2014年ぐらいに、生徒たちの出口として、Jリーグクラブの経営にチャレンジをしようと試みたこともありました。そのハードルの高さや難しさについて、僕も本田も体感しています。
――実際にJクラブにアプローチしたのですか?
鈴木:はい、Jクラブに可能性を探らせていただいたり、アマチュアクラブでもそういうお話はさせていただきました。ただ、既存クラブと一緒にやるのは難しい部分もあったので、ゼロからチャレンジしてみようかなと。
――ゼロからチャレンジしようと思った時に、どういう手順を踏んだのですか?
鈴木:以前、ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREAを立ち上げた時にも、ゼロからクラブを立ち上げるという構想はありました。登録までの部分を全部調べて、あとは形にするだけというところまで進めていたので。一回止まっていたものが今回もう一度動き出した、という感じです。
――東京都を選んだのはなぜですか?
鈴木:最初から東京23区内にJクラブをつくりたいという本田の思いがありました。
――やっぱりそれは東京の都市としての魅力ですか?
鈴木:そうですね。
――ONE TOKYOという名称はどの段階で決まったのですか?
鈴木:本田が「ALL ONE TOKYO」という名前をずっと推奨していたのですが、(「ONE TEAM」「One For All , All For One」というワードが注目を集めた)ラグビーワールドカップが盛り上がった直後のタイミングでもあったので、もっとシンプルに、みんなで一つになる、一番になる、という意味を込めて「ONE TOKYO」に変えました。
――クラブチームの代表に就任したきっかけは?
鈴木:現役サッカー選手である本田が、現時点では責任を負う立場にはなれないので、責任を負う立場として僕がいるというイメージです。きっかけといいますか、本田と何かを立ち上げる時は、ずっとそうやってきています。
――新規のプロジェクトに関してはすべて?
鈴木:はい。スポーツ系は全部そうですね。投資関係以外は。本田と何かやるとなったら、基本的に僕が(笑)。
――すごくやりがいのあるプロジェクトだと思うのですが、鈴木さんの立場として、チャレンジングに感じたことは?
鈴木:僕はどちらかというとどっぷりサッカー人なので、最初は、あまり自分の中で腑に落ちない部分もあって。サロンを立ち上げてみんなでつくる、リアル「サカつく」という方向が、どんな未来になるか全然想像がつかなかったですし。
――これまでに通常のクラブ運営を見てきているし、知っているわけですね。
鈴木:はい。でも実際に動き始めると、これまでサッカーにあまり関わったことがなかった人たちが、生き生きとクラブ経営を、サロンを通じて行っているのを目の当たりにしました。これは新しいサッカーファンをつくる、より広くサッカーを普及させていく盛り上げの中で必要なものではないかと感じ始めました。なので、しっかりとしたチームづくりというところと、新しい部分を両輪でやっていかなければならないところは、面白いチャレンジだなと。そこが難しいですけど、すごく可能性もあると感じています。
「チームとして選手とも向き合って、勝てるチームをつくる」
――初期段階としては、注目の集め方や話題性も含めて、とてもうまくいっているように見受けられます。本田選手のクラブとの関わりについても教えてください。
鈴木:僕が、今一番彼に求めているのは、チームづくりのところです。プレーする選手が不安になってはいけないので、どういう方向性で、どういうチームづくりをして、来年、東京都(社会人サッカーリーグ)3部に上がるためには何をしなくてはいけないのか。その部分の軸を、本田につくってもらいたいと考えています。実際に現状、想像以上にコミットしてくれています。サロンは、関わってくれているメンバーの皆さんで運営していくものなので、どちらかというとこのチームづくりが、僕と本田が注力して良いものにしていかなければいけない部分だと思います。本田本人も、そこをやりたいと考えていると思うので。
――チームづくりというのは、「チームとして選手とも向き合って、勝てるチームにする」ということですか?
鈴木:そうです。現状どうしてもサロンのほうが注目されすぎていて、選手に対して「実際どういうふうに動いていくのか?」というところが見せられていない部分があるので。例えば、本田が信頼するコーチやスタッフをそこにちゃんと配置することであったり、どういう戦術で戦っていくのか示していく必要があります。(2015年から5年間経営に参入した)SVホルンでも、リモートで本田の今までの知見や意見を直接取り入れてやっていました。そういう方法で、きちんと選手本人たちが成長できるような場所として、彼がいることは大事かなと思います。
――選手を含めたSNSのグループのようなものがあるのですか?
鈴木:はい。そこに本田も入っています。
――そこで、本田選手が選手たちに向けて発信をしているのですね?
鈴木:そうですね。全選手と面談を行った時も、実際に本人が全員と会って10分ずつ話をしているので。一人ひとりの選手に対してしっかりと向き合って、チームづくりにもコミットしています。
――そこで、目指すクラブの方針を選手たちに打ち出しているのですか?
鈴木:クラブの方針という意味では、武井(壮)監督や、GMの乙武(洋匡)さんと一緒に話しながら決めています。もっとコアな部分で、サッカーにおいて一人ひとりが何をするべきか、フォーメーションや戦術の部分などは本田のこだわりもあるので。そういうところは、すべて本田の意向を入れています。
――われわれがONE TOKYOを見ていく楽しみの一つとして、本田選手がやりたいサッカーが見えるわけですね。
鈴木:そうですね。SVホルンでやっている時もそうですし、カンボジア代表もそうですが、本田本人の色がかなり表れてきています。ONE TOKYOの選手たちがどこまでできるかというところは、これから試行錯誤しながらチャレンジしていく部分です。
――本田選手のサッカースタイルとなると、しっかりボールを大事にするスタイルに?
鈴木:はい。理想はそうなんですけど、東京都4部を戦う上で、やらなければならないことの優先順位が少し違ってきます。そこは本人ともいろいろ話している段階ですが、彼の中ではよく理解して現実的に考えていると思います。
――そういう話し合いを本田選手と鈴木さんでしているのですか?
鈴木:はい。僕自身、東京都2部、1部でプレー経験があるので。
――ご自身が東京都リーグを味わっているのですね。
鈴木:はい。なので先日、武井監督とミーティングをさせていただいた時は、本田のやりたいサッカーを踏まえた上で、チームとしてまず何をしなきゃいけないかというところを中心に話しました。
そうそうたるインフルエンサーたちをも巻き込む、ONE TOKYOの魅力とは
――クラブとして、今シーズン、そして来シーズン以降の基準とする目標は?
鈴木:順調に上がっていくこと。そこ以外はないと思っています。ただ僕としては、選手たちがこのプラットフォームの中でどれだけ成長してくれるか、成長できる学びを与えられるかも踏まえてやっていきたいです。子どもたちの指導をずっとやってきたのと同じように、大人の選手たちも、まだまだ成長できる部分はあるはずです。そこに対して僕も本田も今までやってきた経験を落とし込んで、選手たちが少しでも成長できればと思います。
――本田選手はオンラインサロンの中でも積極的に発信されていますよね?
鈴木:オンラインサロンでの本田のコメントも、もはや追えないんですよね(笑)。スレッドが立ちすぎているので。
――確かに(笑)。
鈴木:それについて一度議論したのですが、あえて一旦、カオスをつくってみるという結論になりました。
――僕もオンラインサロンに入っていますが、更新が早すぎて(苦笑)。ひろゆきさん(西村博之/匿名掲示板2ちゃんねるの開設者)もすごくコミットしていますよね。
鈴木:ひろゆきさんは化け物ですね。
――処理能力がすごいですよね。ひろゆきさんはNowDo(プロを目指す選手をオンライン指導で育成し、本田選手からも直接指導が受けられるサービス)を通じてONE TOKYOに関わっているのですか?
鈴木:そうです。NowDoがONE TOKYOのプロジェクトにも関わっているので、ひろゆきさんもNowDoのプロデューサーとして関わっていただいています。
――ひろゆきさん自身もすごく楽しんでやっているように感じられます。
鈴木:彼の本業というか、自身の能力を一番発揮できる分野がコミュニティづくりなので。いろいろな企画やアイデアを、ひろゆきさんが先陣を切ってやってくれています。
――実際、あのひろゆきさんが身近な存在になるというのは、どういう感じですか?
鈴木:この前もお話させていただいたんですけど(REAL SPORTS内『「正しい努力ができているか?」本田圭佑、西村博之ら超一流が集う「NowDo」の真価とは?』)、やっぱり学びしかないです。本当に人間的に素晴らしく優しい方ですし、みんなのことを考えながらいろいろ中心になって動かしてくれています。ただ、みんなの意見を聞いてくれるんですけど、誰も論破できないので、結局ひろゆきさんの意見になります(笑)。
――箕輪厚介さんがコミットされた経緯は?
鈴木:箕輪さんは、プロジェクトメンバーというわけではないです。(ONE TOKYOの)トライアウトを行うと発表した時に、一番最初に応募してくれて。その熱意、そしてプレー面でも、本当に一生懸命だっていうところで、本田も「選手の見本となる」と言っていて。
――トライアウトの映像をライブで見ましたが、ボールがないところでの動きを一生懸命繰り返していたのが印象的でした。
鈴木:本当にそうなんです。僕らも実際に現場で見ていてそうだったので。
――箕輪さんの発信力はONE TOKYOにとって、すごく武器にもなりますよね?
鈴木:そうですね。いろいろ総合的に考えた上で、チームに入っていただきました。
――続いて、GMの乙武さんについて。乙武さんも自らオンラインサロンに入って、GMに立候補をされたのですか?
鈴木:そうです。僕らもそうですけど、本田が直接たくさん声を掛けてくれていて、そこで、著名な方々に広まっているというところもあります。
――すごい営業力ですね。
鈴木:いやー、本当にすごいです。営業マンなので。
――そういう人たちは、どういう点を面白がってくれていると思いますか?
鈴木:ONE TOKYOのオンラインサロンに入れば、クラブ経営を本当にリアルに体験できるというのが広がっていると感じています。僕もサロンに入って感じたのが、確かに今までそういう場がなかったですし、入ることで運営面やクラブをつくっていくという楽しみ方があります。そこはすごく魅力だなと僕自身思いましたし、皆さんが面白がってくれているのもやっぱりそこなのかなと。例えば、ゼロからクラブを立ち上げることであったり、昇格のための細かい条件であったり、一般の人たちは知り得ないようなことも、東京都4部からJリーグを目指すという体験が、本当にリアルにできると思うので。
他サービスとの連携とこれまでの経験を生かし、選手の育成を最大化
――サッカースクール事業のSOLTILOとONE TOKYOの今後の関わりは?
鈴木:ブランディングとしては分けつつ、連携はしていきます。SOLTILOで育った選手がONE TOKYOに入るという可能性も十分にあります。
――ONE TOKYOと他のサービスとの関わりというのは、NowDo含めてあるのですか?
鈴木:そうですね。NowDoのサービスを実際に今ONE TOKYOの選手が使っています。あと、Knows(運動を数値化する最先端ウェアラブルセンサー)もONE TOKYOに導入させています。
――NowDoは全員使っているのですか?
鈴木:全員が使えたらいいなと思ってはいます。選手が本田とコミュニケーションを取れる場は必要だと考えていますし、NowDoのサービスを使えばコミュニケーションが容易に取れるので。さらに、そこで選手のメンタリングができるメリットもあります。
――鈴木さんは子どもの育成のスペシャリストでもありますが、今後ONE TOKYOの下部組織をつくっていきたいという思いはありますか?
鈴木:僕自身、そこに対してどこまでコミットできるかはまだわかりませんが、ONE TOKYOとしては将来的に必要になってくると思います。自分の今までの経験値を生かして、落とし込んでいきたいです。
――選手として、一緒に練習するようなことは?
鈴木:選手登録は一応しています(笑)。
――それはオープンにしてもいいのですか?
鈴木:本田に怒られるかもしれませんが、たぶん大丈夫だと思います(笑)。最初は人数が揃わない可能性もあったので。僕のポジションはセンターバックかボランチなんですけど、今はセンターバックが少ないので、何かの時のために一応(笑)。
――鈴木さんのプレーが見られることも、ひそかに楽しみにしています(笑)
<了>
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PROFILE
鈴木良介(すずき・りょうすけ)
1981年生まれ、東京都出身。「ONE TOKYO」代表。「NowDo株式会社」取締役副社長。本田圭佑と共に2010年から国内外でサッカークリニックなどを開催。2012年には「SOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOL」を本田と共に立ち上げ、全国76校にわたる国内外でサッカースクール、施設運営事業を行う「SOLTILO 株式会社」を設立し、取締役副社長に就任。今回の「NowDo株式会社」の取締役副社長に加え、スポーツ競技におけるセンシング技術を使った(ウェアラブル)IoT事業ビジネスを展開する「Knows株式会社」、2019年4月にスタートした幕張ベイエリア内の認可保育園、インターナショナルスクールの経営を行う「SOLTILO CCC株式会社」の代表取締役社長も務める。
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