JFL昇格を懸けた「地域CL」出場権どう決まる? エリース、南葛が突破した過酷な「全社」の舞台裏
JFL昇格を懸けた全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)。その出場権を巡る争いで、毎年大きな意味を持つのが、全国から32チームが集う全国社会人サッカー選手権大会(全社)だ。2026年大会では、エリース豊島FCと南葛SCがこの大会を勝ち抜き、地域CLへの切符を獲得。一方、すでに出場権を持つ福山シティFCやヴェロスクロノス都農は、異なる立場で大会に臨んでいた。JFL昇格を目指すクラブにとって、全社とは何なのか。そして、シーズン移行を迎えた日本サッカーの中で、その存在意義はどう変わっていくのか。
(文・撮影=宇都宮徹壱)
地域CLの12枠を左右する「全社」という大会
10月31日、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2026(以下、地域CL)の組み合わせ抽選会が行われた。
JFL昇格を懸けた地域CLには、全国から12チームが参加。11月13日から15日まで、大分、兵庫、群馬の3会場で1次ラウンドを開催。その後、各グループ1位の3チームと、2位のうち成績最上位の1チームが決勝ラウンドに進出し、11月25日から29日にかけて水戸で行われる決勝ラウンドを戦う。来季のJFLに昇格するのは、上位2チームだ。
今回の抽選の結果、Aグループには南葛SCとヴェロスクロノス都農、Bグループにはエリース豊島FCと福山シティFCが入った。いずれも、つい先日まで宮崎県で開催されていた第62回全国社会人サッカー選手権大会(以下、全社)で、それぞれ明暗が分かれたチームである。
そもそも地域CLの出場12チームは、どのように決まるのか。基本となるのは、北海道から九州まで9つの地域リーグのチャンピオン。そこに全社の成績上位チームから、最大3チームが加わる。全社のベスト4に入ったチームのうち、地域CLの出場権を持たないチームが対象となる。
今回、全社で新たに出場権を獲得したのは、優勝したエリースと準優勝の南葛。3位のFC BASARA HYOGOと4位の岳南Fモスペリオは、それぞれ関西と東海のリーグ王者として、すでに出場権を持っていた(いわゆる「権利持ち」)。そのため全社枠は2となり、残る1枠は地域リーグ2位からの輪番制によって、東北リーグ2位のブランデュー弘前FCに与えられた。
「敗者復活戦」だけではない。全社が持つもう一つの顔
全社には、地域CLの出場12チームを揃えるための、いわば敗者復活戦という役割がある。ただし、それだけで全社という大会の魅力を説明できるわけではない。
全社は、全国から32チームが集結し、5日間連続で開催されるトーナメント方式の大会だ。試合は80分(40分ハーフ)で、同点なら延長戦なしのPK戦。しかも国スポ(国民スポーツ大会)のリハーサル大会を兼ねているため、開催県の各地に試合会場が点在するという特徴がある。今回、私は宮崎に4日間滞在し、西都市や綾町などの会場を巡りながら、激戦の模様を撮影してきた。
私が初めてこの大会を取材したのは2006年。なんと、もう20年も前の話だ。この大会で優勝したのは、現在J1で戦っているV・ファーレン長崎。トーナメント表にはFC町田ゼルビア、FC岐阜、カマタマーレ讃岐といった、現在のJクラブの名前を見出すことができる。
また、全社枠から地域CL(当時は地域決勝)を突破し、JFLを経てJリーグに到達したクラブもある。最近でいえば2014年のFC大阪、さらに遡ると2009年の松本山雅FC、2007年のFC Mi-OびわこKusatsu(現:レイラック滋賀)もそうだ。
そんな全社を、今年も取材してきた。今回、特に印象に残ったのは、地域CLの出場権を持つチームと、持たないチームとの間に生じる、微妙な温度差である。

南葛とエリースが証明した、関東リーグの競争力
今年の全社で最も注目すべきは、関東リーグ勢の躍進である。
2026年の関東1部を制したのは、東京ユナイテッドFC。昨年に続く2連覇であるが、6月に開催された全社の関東予選では敗退しており、宮崎大会には出場していない。
一方、リーグ3位の南葛と4位のエリースは、全社の関東予選を突破。両チームとも勝点31で並びながら、リーグ戦では9ポイント差で優勝には届かず。そのため、地域CLへの出場を実現するには、全社で勝ち上がる必要があった(これをファンの間では「全社懸け」という)。
南葛は『キャプテン翼』の作者である高橋陽一氏がオーナーを務め、Jリーグ参入という目標を掲げて葛飾区でのスタジアム整備プロジェクトも進行中。それだけに、地域リーグで足踏みしている現状を、いつまでも続けるわけにはいかない。南葛にとって全社は、どうしても勝ち抜かなければならない大会となっていた。
実際、宮崎での南葛の戦いは力強かった。初戦の三菱重工長崎SCに8-0で圧勝すると、2回戦では追いすがるベルガロッソいわみを3-2で振り切った。準々決勝では桐蔭横浜大学FCを6-0で退け、ついに念願の地域CL出場権を獲得。準決勝でも、関西を制したFC BASARA HYOGOを3-2で逆転勝利し、決勝まで勝ち進んでいる。
もう一方のエリースは、南葛とは異なる意味で注目すべきチームであった。創設から半世紀以上の歴史を持ち、地域サッカーの世界ではおなじみの存在。今季から指揮を執る小寺真人監督は、2025年にヴェロスクロノス都農を率いて全社優勝を達成している。
小寺監督のキャリアも興味深い。大学卒業後にスペインへ渡り、現地で指導者としての経験を積んだ。帰国後は、東京ヴェルディやセレッソ大阪などを率いたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の下で、分析担当や通訳を務めた。そして4シーズンにわたり都農を率いたのち、エリースの監督に就任している。
エリースのサッカーには、確かにスペインの香りが感じられる。選手のポジショニングや判断を重視しながら、ボールを保持することだけにはこだわらない。相手の出方に応じて、勝つための方法を選択する。その柔軟性こそ、小寺監督の持ち味なのだろう。
今大会のエリースは、初戦でIKOMA FC奈良に3-2で逆転勝利。2回戦では、小寺監督の古巣である都農と対戦し、1-1からのPK戦を6-5で制した。その後はアルテリーヴォ和歌山に2-0、岳南Fモスペリオに1-0と2試合連続でクリーンシート。そして決勝では、同じ関東リーグの南葛を2-1で破り、見事に初優勝を果たしている。
南葛とエリースは、いずれも今回が地域CL初出場。関東リーグでは3位と4位に終わった両チームが、全社という「敗者復活戦」を経て、JFL昇格への挑戦権を獲得することとなった。そしてこの結果は、関東リーグのレベルと競争力の高さを裏づけるものとなったと言えよう。

「全社懸け」と「権利持ち」。同じ大会でも異なる事情
全社で勝ち進んだ南葛とエリースに対して、躍進を期待されながら早々に宮崎を去ることとなったのが、福山シティFCとヴェロスクロノス都農である。
福山は中国リーグで5連覇を達成し、すでに地域CLの出場権を獲得。地域リーグの中でも、継続してJFL昇格を目指してきたクラブの一つだ。しかし、今年の全社では初戦でコバルトーレ女川と対戦し、1-1からのPK戦で4-5と敗れてしまった。
今大会の福山は、岡本佳大代表は「地域CLを考えて3試合は戦いたい」としていたが、またしても全社で結果を残すことができなかった。初戦で敗れてからも、宮崎に残ってトレーニングマッチとスカウティングを続けていたと聞いているので、今大会での経験は決して無駄にはならないはずだ。
一方、九州リーグを制した都農は、今年18戦全勝という圧倒的な成績を残している。総得点72、総失点6という数字からも、九州での強さが際立っていたことがわかる。
都農は、人口1万人ほどの小さな町をホームタウンとするクラブだが、近年はJFL昇格を目指して着実に力を蓄えてきた。昨年は全社で優勝し、地域CLでも決勝ラウンドに進出。最終的には3位となり、あと一歩のところで昇格を逃している。
その都農が、今年の全社では2回戦で敗れてしまった。相手は前述したエリース。都農が先制したものの、後半に同点に追いつかれ、PK戦の末に敗れることとなった。都農の中尾裕也代表は「(小寺監督は)ウチのことを知り尽くしていますからね」と苦笑い。地元開催での2回戦敗退は、彼らにとっても予想外の展開だったようだ。
ここで考えておきたいのが、いわゆる「権利持ち」の立場である。
全社には、地域CLへの出場権を何としても勝ち取りたい「全社懸け」のクラブがある一方、地域リーグで優勝している「権利持ち」のクラブもある。両者が同じトーナメントを戦っているが、当然ながら大会に懸ける意味合いは異なる。
そもそも全社は、5日間連続で試合が行われる過酷な大会。勝ち進むほど選手の疲労が蓄積するし、負傷者が出るリスクも高まる。しかも全社の終了から、わずか2週間余りで地域CLが開幕。「権利持ち」からすれば、ここで手の内をすべて明かすことや、主力選手を消耗させることは、むしろデメリットと捉えるのが自然であろう。
もちろん、福山や都農にそうした判断をしていたかはわからない。全社に出場する以上、どのチームも目の前の勝利を目指すことに変わりはないはずだ。それでも「全社懸け」と「権利持ち」とでは、この大会での優先順位が異なる。
そして10月31日の抽選結果、地域CLの1次ラウンドでは南葛が都農と、エリースが福山と対戦することとなった。全社枠を勝ち取ったクラブと、全社で勝ち抜けなかった地域チャンピオン。果たして全社での明暗は、地域CLでどのような影響を与えるのだろうか。

秋春制で変わる地域CL。全社の存在意義はどうなる?
ここまで2026年の全社を振り返ってきたが、最後に大会の将来について考えてみたい。というのも、JFL昇格のフォーマットは、今後大きく変わる可能性があるからだ。
周知のとおり、Jリーグは今季からシーズン移行を実施し、JFLも2026-27シーズンから秋春制となった。地域リーグでも、これに合わせた動きが進んでいるという話も聞く。仮にJFL以下でもシーズン移行となった場合、問題になるのが地域CLの開催時期だ。
現在の地域CLは、各地域リーグが秋までに終了し、10月に全社を開催。その結果を踏まえ、11月にJFL昇格チームを決定するという流れになっている。地域リーグが揃って秋春制になれば、このスケジュールも見直しが必要になるだろう。
ところが全社には、全国のアマチュアクラブのチャンピオンを決める以外にも、もう一つ重要な役割がある。それが国スポのリハーサル大会という位置づけだ。
今回の宮崎大会も、2027年の「日本のひなた宮崎国スポ」に向けたリハーサル大会として開催された。競技会場の運営や大会組織の経験を積むという意味でも、開催県にとっては重要なイベント。いくら地域CLの開催時期を変更したからといって、国スポのリハーサル大会である全社の開催時期まで、簡単に変更できるとは考えにくい。
さらに、5日間連続開催という全社の大会方式も、以前から議論の対象となってきた。確かに、40分ハーフとはいえ、短期間に5試合を戦うことは選手への負担が大きい。地域CLを目指すクラブにとっては、できるだけ万全の状態で昇格を懸けた戦いに臨みたいところだろう。
一方で今年7月には、JリーグがJ4に相当する「Jチャレンジリーグ(仮称)」の設立を検討していると報じられた。この構想によって、日本サッカーのピラミッドがどのように変わるのか、現時点では不明。仮に構想が実現すれば、地域CLやJFLのあり方にも大きな影響が及ぶだろう。
そう考えると、全社から地域CLへという現行のシステムも、あるいは今回が最後になる可能性は否定できない。
そんな中、今大会は話題性のある南葛が勝ち進んだということもあり、試合会場にはアクセスの悪さをものともせず、多くの観客が詰めかけていた。圧巻だったのは、南葛が全社枠を獲得した準々決勝で、綾錦原サッカー場には月曜日の日中にもかかわらず、多くの観客がピッチ上での熱戦に夢中になっていたことだ。おそらく、全社を初めて観戦した人も多く含まれていたはずだ。
シーズン移行によって、日本のサッカーは大きな転換期を迎えつつある。その過程で、全社の位置づけや大会方式が変わることもあるだろう。その一方で、全国の地域クラブが一堂に会し、サポーター同士の交流も生まれる。確かに、5日連続のトーナメントという大会は尋常ではないが、これもまた日本独自のサッカー文化の形だと言えるのではないだろうか。
<了/文中敬称略>
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