欧州に挑む16歳・浅野蓮の感性はいかに育ったのか。上田綺世も輩出したmalvaに学ぶ「正解」を教えない育成

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2026.10.07

日大藤沢高校でプレーする16歳のMF浅野蓮は、14歳でFリーグの最年少出場・得点記録を更新した。その後、ドイツ1部シュトゥットガルトの練習や、イングランド2部クイーンズ・パーク・レンジャーズ(QPR)のトライアルに参加。QPRでは実戦2試合で3得点1アシストを記録し、欧州でも持ち味を発揮した。小学生の頃から指導してきた塩澤昴コーチによると、浅野は幼い頃から、ポジショニングやオフザボールの動きに際立った感覚を見せていたという。その個性を型にはめず、自分で考える力へとつなげてきたmalvaサッカースクールの育成について聞いた。

(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=malvaサッカースクール)

大人が教える「正解」で、感性を消さない

――まず、浅野蓮選手をいつ頃から、どのような立場で指導してきたのでしょうか。

塩澤:蓮はmalva代表の浅野の息子なのでスタッフは赤ちゃんの頃から知っています。幼稚園の年長さんからスクールに来ていましたが、最初は見に来ていても、泣いてしまって練習に入れなかったりすることもありました。本格的にレッスンを受け始めたのは、小学1年生からです。私一人が毎週担当していたわけではなく、いろいろなコーチが関わりながら、中学3年生頃まで長く指導してきました。

――malvaサッカースクールでは、子どもたちの成長を支えるうえで、どのようなことを大切にしていますか。

塩澤:大人が考える常識や決まった枠に当てはめるのではなく、その子がその子らしく伸びていくことを最優先にしています。指導者は日々観察しながら、どのタイミングでどんな言葉を投げかけたら伸びていくのかを考えています。

 サッカーでも、教科書的に「これが正解」と教えることはほとんどありません。基本となる考え方は伝えますが、状況が変わり続けるスポーツなので、その瞬間の判断や感覚を消さないようにしています。大人には見えていなくても、子どもが気づいている空間やタイミングはたくさんあります。子どもの感性から学びながら、一緒に歩んでいる感覚に近いですね。

――小さい頃の浅野選手には、どのような特徴がありましたか。

塩澤:蓮にはお兄さんが2人いて、3人とも違うタイプですが、それぞれの感性を消さずに育ってきたところは共通していると思います。その中でも、蓮の感覚はずば抜けていました。少し抽象的になりますが、同じものを見ていても、受け取る刺激や感じ取ることが違うんです。決められた正解に合わせることばかり求めると、もともと持っている感覚が消えてしまうことがありますが、蓮には小さい頃から「感覚値がちょっと違うな」とはっきりわかるものがありました。

鋭い感覚を生かすために、どんな言葉を届けるか

――本人は、ポジショニングやオフザボールの動きを「感覚でやっている」と話していましたが、その感覚は、指導者からも見て取れるのでしょうか。

塩澤:わかります。少し立ち位置や体の向きを変えて、状況に応じてスペースを探せるんです。それが偶然ではなく、明らかに狙ってやっているとわかる。小さい頃からそういう要素を持っていたので、いかに消さないかを考えて接してきました。「こうしなさい、ああしなさい」と言えば、彼はすぐにできてしまいますが、言われたことに合わせることで、良いところが消える可能性もある。多少のことはあえて口を出さず、自由にやらせることを大切にしてきました。

――その感覚の鋭さを持ちながらも、壁にぶつかることはあったのですか?

塩澤:感覚の面では、大人より先に行っていると思うことがあります。そういう子に対しては、こちらが教えるというより、指導者が学ばせてもらう部分が大きいんです。ただし、彼は周囲に合わせて調整できてしまうので、大人が何かを教えようとすると、その求められている範囲の中でプレーしてしまうこともある。自分の感覚と周囲とのずれが大きくなったり、納得できないことが続いたりすると、真剣に取り組めなくなることもあります。そこで大人が一般論を持ち出して「そうじゃない」と言うと、さらにやらなくなる。そこは難しいところですし、本人が何を感じているのかを見ていないといけないと思います。

――浅野選手が、自分の感覚を理解して言葉にする力はどのように育まれてきたのでしょうか。

塩澤:かしこまって言語化の練習をするということはないですが、日々の会話が大きいと思います。お父さんとのやりとりを見ていると、「どうだった?」「どう思った?」「どう感じた?」と、よく質問しているんです。小さい頃からそういうやり取りをしているので、自分の感覚を認識できているのだと思います。

 蓮は「ここだ」と目標を決めると、しっかり取り組めるタイプです。物事の核心を捉えられるので、勝負がかかる試合ほど結果を出しますし、その着眼点には大人も驚かされます。

上田綺世に通じる、勝敗の先を見据えた育成

――malvaでは、日々の練習でも、自分で課題を設定して取り組んでいるのでしょうか。

塩澤:例えば、疲れている日でも「今日はこの1対1の、この角度からのドリブルだけはやろう」というポイントを決めています。全部の練習を同じように頑張るというより、自分で課題を絞って取り組むところがあります。

 こちらからも、「全部に勝とうとしなくていいから、一つポイントを決めて、そこに勝てたら今日は勝ちにしよう」と伝えます。課題を細分化して、自分で決めたことができたらOKにするんです。だから、試合には負けているのに、勝ったような顔をしている子もいますよ(笑)。でも、それでいい。目標や課題をわかりやすくして、小さな達成を積み重ねていくことが大事です。

――目の前の試合に勝つことと、選手の将来を見据えて育てることの両立を、指導の現場ではどのように考えていますか。

塩澤:試合に負けることもありますし、時には負けを経験させることも必要だと考えています。基本的なセオリーは伝えた上で子どもたちが主体になって考え、自分たちで話す機会や失敗する経験を重ねています。その中で、その子自身の感覚を育てています。

 大事なのは、今だけではなく、3年後、5年後、10年後に、自分で考えられる選手になることです。そこに体の成長もついてくれば、できることは増えていきます。私たちはサッカーをツールとして、人を育てることをメインにしています。プロになるかならないかにかかわらず、自分で考えて行動する力は、社会に出てからも生きると思いますから。

――malvaには、上田綺世選手も通っていました。長く活躍する選手に共通するものは、何だと感じますか。

塩澤:感覚と同時に、自分が感じたこと、見えたことを整理できる思考力も大切です。これは私自身の見方ですが、上田くんはフィジカルが足りずに苦しんだ時期もあったと思います。ただ、ゴールを取ることを追求し続け、そのために必要なことを自分の中で整理して、それを楽しさとして持ち続けていたので、フィジカルがついてきた時に力が大きく表れたんじゃないかと思います。彼のインタビューを聞いていても冷静に整理して話しているのを感じますし、そういう力があるからこそ、環境が変わっても適応し続けられるのだと思います。

 コンスタントに活躍するためには、自分の良さを育て続けることと、それを伸ばしてくれる指導者や環境との出会い。その両方が大事だと感じます。

――浅野選手の成長には、どのような「malvaらしさ」が表れていると感じますか。

塩澤:個性を際立たせることです。自分の感覚を信じることや、自分の良さを認識することを大切にしています。強みがわかれば自信になりますし、その良さを使って仲間を助けたり、仲間とつながったりしていくことができます。蓮はまだ16歳ですが、私たちが大切にしているものが凝縮された、象徴的な選手だと感じます。

【連載前編】14歳でFリーグ最年少記録、英2部QPRのトライアルでも3得点。日大藤沢・浅野蓮が語る欧州での手応え

<了>

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