フットサルで磨いた判断は欧州サッカーでどう生きるのか。浅野蓮の可能性を広げた育成と「環境を選ぶ力」

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2026.10.09

フットサルの狭いコートで培った判断力は、11人制サッカーや海外の舞台でどのように生かされているのか。14歳でFリーグの最年少出場・得点記録を更新した浅野蓮は、現在、日大藤沢高校でプレーしながら、欧州クラブの練習やトライアルにも参加している。小学生の頃から成長を見てきたmalvaサッカースクールの塩澤昴コーチに、サッカーとフットサルの両方を経験する意義や、幼少期から海外に触れてきた影響、本人の感覚を尊重してきた進路選択、そして浅野の今後に寄せる期待について聞いた。

(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=malvaサッカースクール)

狭いコートで磨く緻密な判断力を、広いピッチへ

――浅野選手はmalvaでサッカーとフットサルの両方を経験し、14歳でFリーグ2部のマルバ水戸FCのトップチームに加わりました。育成年代で両競技に取り組むメリットは、どこにあると考えますか。

塩澤:小学生のサッカーでは、身体能力や運動能力が高ければ、相手DFと駆け引きをしなくても勝ててしまう部分がありますし、勝てれば良いという雰囲気になりがちです。しかし、フットサルはコートが狭いので、同じようにはいきません。スペースをどうやってつくるか、スペースをいつどのように使うかを考える必要があります。

 例えばサッカーでは走り抜ける場面でも、フットサルでは相手と相手の間で止まったり、自分が動いてマークを引きつけて味方にスペースをつくり出したりする。そうしたスペースの使い方やタイミングを繰り返し経験できます。コートが狭い分、判断する回数も多いので、同じ1時間でも考える機会をたくさん持てます。フットサルで身につけた考え方を持ってサッカーをすると、細かいところまで考えて動けると思います。

――両方を経験するうえで、注意したいことはありますか。

塩澤:フットサルばかりになると、プレーのスケールが小さくなってしまうこともあります。サッカーならシュートを打てる距離でも打たなくなることがあるので、両方の良い部分の感覚を大切にして、状況に応じて使い分けてプレーすることが大切だと思います。

 フットサルの考え方を持ってサッカーをすれば緻密に動けますし、サッカーの感覚を持ってフットサルをすれば、遠くからでもシュートを打てる。サッカーはスペースが広く、加速した状態でぶつかり合う場面が多くなるので、フィジカル的にはその感覚でフットサルをすれば、1対1に強くなる良さもあると思います。そうした両方の良さを組み合わせることは、それぞれの競技にとってプラスになると思います。

――浅野選手は14歳でマルバ水戸FCのトップチームに引き上げられ、Fリーグに出場しました。トップチームで生かせると考えられた強みと、当時の課題はどこにあったのでしょうか。

塩澤:私はトップチームの現場に日常的に関わっていたわけではありませんが、長く見てきた立場から言うと、感覚的な部分は大人に交じっても際立っていると思います。フィジカルや戦術理解では、普段からその環境でプレーしている選手のほうが上回ります。ただ、蓮は「このタイミング」「この瞬間」という勝負どころを逃さないので、そこはFリーグの選手にとっても彼から学べる要素だと思います。14歳でトップチームに引き上げられたのは、足りないところは周囲にカバーしてもらいながら、彼の良さをチームに取り入れていきたいという狙いがあったと思います。

――高校進学後もmalvaでプレーする機会はあるのでしょうか。

塩澤:今は高校のサッカー部の活動が中心なので、こちらの練習に参加する機会は少なくなりましたが、たまにFリーグのトップチームの練習に参加しています。小学生の頃からフットサルコートでプレーしてきたので、狭い局面での考え方や、スペースの見つけ方、使い方は整理できていて、体でも覚えていると思います。今もフットサルをプレーすることで、サッカーに還元されるものはあるんじゃないでしょうか。

幼少期からの海外経験が育てた、環境への適応力

――malvaでは育成年代から海外遠征を行っています。子どもたちに、どのような経験を積んでほしいと考えていますか。

塩澤: malvaでは活動の一環として、小学3年生頃から海外へ行く機会をつくっています。タイやスペインなど、毎年どこかに遠征していて、蓮自身も小さい頃から何度も海外を経験してきました。

 日本とは文化もサッカーの考え方も違います。特にスペインでは、小学生でも考えてプレーしていることがよく伝わってきますし、ゴールキーパーも含めて合理的に判断していて、しっかり指導されていることがわかります。表面的なプレーを真似するのではなく、そういうところを実際に見て学べることは大きいと思っています。

――浅野選手が、シュトゥットガルトやクイーンズ・パーク・レンジャーズ(QPR)など、欧州クラブのトライアルに至った背景を教えてください。

塩澤:詳しい経緯について、代表の浅野から聞いた話では、欧州クラブとの最初の接点は、小学生年代に参加したスペイン遠征だったそうです。現地でのプレーを通じて、セビージャをはじめとする海外クラブのスカウトから少しずつ注目されるようになったと。中学2年生の夏頃にはエリートプログラムにも選出され、その活動やプレーを通じてドイツのクラブからも関心を寄せられ、シュトゥットガルトの練習参加やマインツからの関心につながったと聞いています。

 シュトゥットガルトでのプレーや評価を経て、さらに海外クラブから注目される機会が増え、2026年6月、高校2年生の時にQPRからトライアルへの正式な招待レターが届いたそうです。海外クラブから特に評価されたのは、ゴール前での感覚やボールを持った際の仕掛け、オフザボールの動きで、ゴールを奪うためのポジショニングやタイミング、チャンスを察知する感覚だったと聞いています。

――幼い頃からそのように海外を経験してきたことは、浅野選手にどのような影響を与えていますか。

塩澤:見てきたものや関わってきた人の数が違うので、目に見えないバックボーンの部分で、人間としての器が大きくなっていると思います。親から受けてきた影響もあるでしょうし、16歳という年齢だけでは測れないほど多くの経験を重ねている。だからこそ、多少のことでは動じず、自分を客観的に見られるのだと感じます。蓮が慌てているところは、あまり見たことがありません。頭の中や心の中は可視化できないのが残念ですが、もしそれらが可視化できたとしたら、同世代の選手との圧倒的な違いが理解できると思います。

――QPRでは、実戦2試合で3得点1アシストを記録しました。初めての環境で、短期間でも自分の力を発揮できた理由をどう見ていますか?

塩澤:私は現地には同行していませんが、彼は環境に適応するのがすごく早いです。初めて行った場所でも全体を見て、自分がどの位置にいて、何をすればいいのかをすぐに頭の中で描ける。周りのレベルを見ながら自分のプレーを調整することも、高いレベルでできる選手だと思います。その力は、彼の大きな特徴ですね。

「楽しいか、楽しくないか」。自分の感覚で選んだ進路

――浅野選手自身は、日大藤沢を選んだ理由として、自分のプレーがしやすく、監督が意見に耳を傾けてくれる環境だったことを挙げています。本人はこれまで、どのような基準で進路を選んできたのでしょうか。

塩澤:両手で数えるくらい、いろいろなチームから声がかかったり、練習やセレクションに参加したりする機会はあったと思います。ただ、本人が参加して感覚的にピンとこなかったところは選んでいません。その点は本人の感覚を信じて決めてきたのだと思います。

 究極的には「楽しいか、楽しくないか」が一番だと思います。どんなに良いと言われる名門クラブや指導者でも、自分が惹かれなければ選ばない。意外に思えるような決断をすることもありましたが、自分の感覚や信念を大事にしていて、家族にその挑戦を支えてもらえる環境があることも大きいですね。

――塩澤コーチは、以前から浅野選手に海外でのプレーを勧めていたのですか?

塩澤:彼は日本のサッカーの枠には収まりにくいのではないかと思っていて、クラブ代表の浅野とも、「早く海外へ出たほうがいいのでは」とずっと言い続けていたんです。

 その年代で何ができるか、何を身につけているかだけで判断するのではなく、異なる文化や価値観をもつ人たちがいる場所で感性を磨いたほうが、彼の場合はいいのではないかと。壁にぶつかったとしても、最終的にはそのほうが伸びるのではないかと考えていました。今は、ある程度イメージしていた方向に進んでいるのかなと感じています。

――これから、浅野選手がどのような選手になっていくことを期待していますか。

塩澤:彼はスペースを見つけて、そこへ入っていく瞬間のスピードが異次元なので、私は香川真司選手のような、セカンドストライカーのイメージを持っています。ゴール前の狭いスペースでも、どこに得点のチャンスがあるかを見つける嗅覚が際立っていると思うので、相手に捕まらない場所を取り続けて、ゴールに関わる場面では顔を出していくイメージです。

 海外にはいろいろなルーツと個性を持った選手がいるので、そこで彼が無意識的に抑えているリミッターが外れたらどうなるのか。どこまで成長してくれるのか、個人的にもすごく見てみたいですね。

【連載前編】14歳でFリーグ最年少記録、英2部QPRのトライアルでも3得点。日大藤沢・浅野蓮が語る欧州での手応え

【連載中編】欧州に挑む16歳・浅野蓮の感性はいかに育ったのか。上田綺世も輩出したmalvaに学ぶ「正解」を教えない育成

<了>

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