「僕が歌い始めると周りが歌い出し、最終的にスタジアム全体に…」GAKU-MCが日本代表ゴール裏での観戦にこだわる理由
オオッ オーオオ オーオオー。サッカーファンには馴染み深い、日本代表が試合をするスタジアムから聞こえてくるサポーターソングの一つ『勝利の笑みを 君と』の歌い出しだ。この曲を「われわれ以上にサッカーを愛しているミュージシャンはいない」との自負を持って生み出したのがMr.Childrenの桜井和寿とGAKU-MCによるユニット「ウカスカジー」。仮に関係者席のチケットをもらっても「ゴール裏に行く」と語るGAKU-MCは、なぜそこまでゴール裏での応援にこだわるのか?
(インタビュー・構成=中林良輔[REAL SPORTS副編集長]、写真提供=MIFA)
カタールでもゴール裏観戦。日本代表のゴール裏が好きな理由
――GAKUさんはゴール裏サポーターとして昨年開催されたFIFAワールドカップ・カタール大会にも応援に駆けつけられています。ゴール裏でサッカー観戦するようになったのはいつ頃からですか?
GAKU:1996年のアトランタ五輪で日本が王国ブラジルを破った“マイアミの奇跡”をテレビで見て感動した経験があったので、2000年のシドニー五輪を現地観戦しました。シドニー五輪ではゴール裏ではなかったのだけど、大会直前に有名な日本代表サポーターの植田朝日くんと知り合って、ゴール裏で応援する楽しさはその時に彼から教わりました。
ゴール裏のサポーターがカッコいいなと思ったのは、本気で自分たちが選手の力になれると思いながら応援しているところを垣間見れたから。ファッションでやっているとかではなかったし、ゲームの流れによって選曲を変えたり、「今ここで俺たちが踏ん張ったら選手に届くぞ!」というMC的な声かけがあったり、そういうのがめちゃくちゃ良くて。
――『勝利の笑みを 君と』というサッカー日本代表公式応援ソングを出されているわけですし、普通に関係者席や来賓席で試合が見れると思うんですけど、それをあえてゴール裏で見る意味はどういうところにあるのですか?
GAKU:熱量が全然違いますよね。おっしゃるとおりで、ワールドカップのロシア大会とか関係者席のチケットももらったんですけど、そのままそのチケットを持って(もともと購入していたチケットで)ゴール裏に行きました。何かこう、見に行ってるんじゃなくて、一緒に戦いたいみたいな。来賓席とか確かに見やすい席なんですけど、自分が貢献できている感じはしないじゃないですか。ところがゴール裏へ行くと、みんな本気になって背中を押そうとしているので、その空気感が好きですね。
ちなみに、僕が日本代表のゴール裏が好きなもう一つの理由なんですけど、ゴール裏の中心エリアって各クラブのボスが集まっているって知ってました?
――Jリーグ各クラブの代表者たちが集まっているということですか?
GAKU:太鼓たたいているのは湘南ベルマーレの代表で、その横でもう一人太鼓たたいているのは川崎フロンターレの代表で、その後ろには清水エスパルスの代表がいて……各クラブのボスだらけなんです。
ふらっと外国の人がガンバ大阪のユニフォームを着て現れて…
――サポーターも“日本代表”なんですね。
GAKU:まさに“日本代表”なの。だから、いろいろなコールがあるじゃないですか。基本はメインのキーパーソンがやっているんだけど、三笘薫選手がいいプレーをして、三笘選手の応援をする時はフロンターレの代表が声出しをするんです。今はブライトンの選手だけど、もともとはフロンターレの選手だから。うわ、かっこいい、この感じみたいな。このやり取りがすごくいいんですよ。
あと、ゴール裏の話ではないのだけれど、日本代表の海外での試合で、ゴール裏サポーターたちが「さぁこれからスタジアムに入るぞ!」と気合い入れて準備をしている時に、ふらっと日本好きの外国の人がガンバ大阪のユニフォームを着てその集まりの中に現れて、そしたらセレッソ大阪の代表が「それ一番ダメだからね!」って文句を言い始めて、それを他のチームの代表が面白おかしくフォローすることがあったり。そういうやりとりが面白いし、微笑ましい。
――もう文化として成立していると。
GAKU:まさに。そういう文化として成立している場所の中で、サポーターが『勝利の笑みを 君と』という僕らウカスカジーの歌を歌ってくれるんですよ。僕がいない時はもちろん他の人がやるんですけど、僕が行くと「やってください!」って言われて。僕が歌い始めると、周りが歌い出して、さらにその周りに波及して、最終的にはスタジアム全体があれを歌うっていう。
――最高ですね。
GAKU:最高なんです。だから、皆さんにはぜひ、ゴール裏ね、あそこはあそこで面白いのよって伝えたいですね、僕は。
―― 一方、最近のJリーグでは、連敗しているチームのゴール裏が殺伐とし、選手や経営者がトラメガを使ってサポーターと対話をしたり、口論になったりという場面も度々目にします。GAKUさんにとってゴール裏サポーターの理想的な在り方とはどういったものですか?
GAKU:すごいですよね。サポーターがチームに意見するとか。株主でもないですし、言い方は悪いですけどただのお客さんじゃないですか。でもそこにあえて意見をしようって、どれだけ思い入れあるんだって話ですよね。こういうビジネスって多分他にあまりないから、サッカーの関係者は大変だろうなと思うんですけど、でもそんなに自分が意見を言おうと思うぐらいのめり込むものをつくれるって、エンターテインメントとしては素晴らしいことをやっていると僕は思うんですよね。何かやってもリアクションもないようなエンターテインメントって、本当にやっててヌルいし。やりすぎて取り扱い注意の人には共感できないですけど、熱をぶつけ合えることはいいことだと思いますよ。
鈴木隆行のゴールを一番“つま先”に近いところで目撃
――これまでワールドカップは何大会現地観戦されているのですか?
GAKU:1998年のフランス大会は行けなかったので、初めてワールドカップを現地で見たのは、2002年の日韓大会のベルギー戦です。その次の2006年のドイツ大会は現地には行ったんですけど日本戦は見れず。2010年の南アフリカは腰が引けて行けず。次の(2014年の)ブラジル、ゴール裏行きました。(2018年の)ロシア、ゴール裏行きました。(2022年の)カタール、ゴール裏行きましたって感じですね。
――現地観戦したワールドカップで特に印象的だったエピソードはありますか?
GAKU:いや、全大会ありすぎます。最初の日韓大会のベルギー戦はゴール裏の最前線で見ていて、鈴木隆行さんのゴールはスタジアムの中で一番つま先に近いところで目撃しました(笑)。
あと、ピッチ外ではブラジル大会の思い出も印象深いですね。次の試合まで3日くらい空いた時に「何する?」となって、とりあえずビーチに行ってみたら、ブラジル人が一日中ビーチでサッカーやっているんですよ。そこにいろいろな国のサポーターが飛び入り参加したりして、ずっと途切れない。勝ち残りで、負けたら次の別のコートを探してというのを繰り返して。その光景が見渡す限りずっと何キロも続いているんです。
もちろん僕も3日間ずっと参加して、ブラジル人はやっぱりうまいし、ドイツチームとも、エクアドルチームとも試合しました。あの体験はずっと忘れられないですし、今でもあの時のことを思い出して、「勝ち残りのサッカーやろうぜ!」と企画してやることもありますね。
2026年はカタールとはまたまったく違った趣の大会になる
――カタール大会で、GAKUさんがSNSに上げていた、日本代表の勝利後にいろいろな国のサポーターに胴上げされている動画もすごく印象的でした。
GAKU:ありがとうございます。カタール大会でよかったなと感じるのは、カタールは山手線内ぐらいの広さの中に、スタジアムも、宿も、盛場も全部あるから。参加国すべてのサポーターがその中に集まるんです。僕は宿が足りない問題の苦肉の策でできたクルーズ船での宿泊だったのだけど、毎日サポーターワールドカップみたいな状況になっていて……。
強豪国が負けると、勝った相手国のサポーターはみんなに祝福されるんです。僕らもアルゼンチンに勝ったサウジアラビアの人たちといっぱいハイタッチしましたし、日本がドイツに勝った後は、エンドレスで「日本人!? イエーイ!」とずっと一緒に喜んで。スペイン戦のあとぐらいからは、ちょっとこれ疲れるなと思って、ユニフォームを脱いで行動していたぐらいの熱狂でしたね。カタール大会は、現地組サポーターにとっては成功事例だと僕は思います。街の雰囲気としてはね。
――いちサポーターとして、今後どのような形でサッカーと関わっていきたいと考えられていますか?
GAKU:まずは7月にオーストラリア・ニュージーランドで開催されるFIFA女子ワールドカップ。これも行こうと思っています。ゴール裏行けたらいいなと。あと、2024年のパリ五輪も行きたいですね。森保さん(森保一 日本代表監督)大好きなので、カナダ・メキシコ・アメリカ開催の2026年ワールドカップも行かなきゃですし、かなり予定は詰まっていますね(笑)。2026年はカタールとはまたまったく違った趣のワールドカップになると思いますけど、北中米は旅に適したエリアですし、それはそれで楽しみですね。
【前編はこちら】GAKU-MCと桜井和寿がつないだ「フットボールと音楽」の輪 ウカスカジー、MIFAを生んだ素敵な出会い
【中編はこちら】「“マイアミの奇跡”で感情が爆発して泣いてしまって…」現役フットボーラーGAKU-MCが語る、愛するサッカーとの理想的な関係
<了>
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[PROFILE]
GAKU-MC(ガク・エムシー)
1970年10月6日生まれ、東京都出身。ラッパー、ミュージシャン。アコースティックギターを弾きながらラップする日本ヒップホップ界のリビングレジェンド。2013年、自身の音楽活動と平行し僚友である桜井和寿(Mr.Children)とウカスカジーを結成。2014年、2018年と日本サッカー協会公認 日本代表応援ソング制作。現在は年間約60本のライブに出演し、TV出演や作詞作曲など作品提供を行う傍ら、レギュラーラジオ番組(J-WAVE)にて毎週サッカーに関わるゲストの活動を紹介するコーナーを担当し、音楽とフットボールという世界二大共通言語を融合し人と人をつなげていくことを目的とした団体MIFA(Music Interact Football for All)での活動などを通してサッカー界でも貢献を続けている。
GAKU-MC OFFICIAL HPはこちら
http://www.gaku-mc.net
GAKU-MC 公式アプリ「GAKU-FC(ガクエクシー)」はこちら
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