中学で控えでも遅くない。U-19日本代表GKの父ノグチピントが貫く“考えさせる”育成論

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2026.07.03

最後尾でゴールマウスを預かる――。一人だけ違うユニホームを身に纏い、チームのピンチを救う。GKはサッカーにおいて、ヒーローになれるポジションだ。ただ、それを担える人材を育てるのは簡単ではない。指導者は選手とどう向き合い、力を伸ばしていくか。育成年代のGK指導に長年携わり、自身の息子ノグチピント天飛もGKとしてU-19日本代表に名を連ねるノグチピント エリキソンフランキ氏はどのような考えで選手の未来に触れてきたのだろうか。

(インタビュー・文・撮影=松尾祐希)

中学時代は控えでもいい。“伸びるGK”に共通する条件

誰が花開くかはわからない。中学時代に二番手でレギュラーではなかったとしても高校で一気に伸びるパターンもあるし、世代別代表に入っていてもうまくいかないケースもある。ノグチ氏は言う。

「高校生くらいまでは二番手でもその先で花開く可能性がある。実際に(大成高校で指導した現在ガイナーレ鳥取でプレーする)バーンズ・アントンは中学生の頃にレギュラーではありませんでした。二番手でも可能性を見て、チームに加えて成長させられる。中学時代までに活躍していてもうまくいかないケースはあります。例えば地区や県の選抜に入った選手であっても消えていくケースもある。

 代表に入ったとしてもそうです。サイズもあり、スキルもある。でも、達成感を得て安心してしまうのかもしれないけど、燃え尽きてしまう。絶対に上に行くという強い意志が必要だし、そういう時にライバルがいると、焚きつけられる。このタイミングで代表に入ったら勘違いしてしまうというケースも見られるので、そこは神経を使うべきではないでしょうか」

もちろん、世代別代表入りやプロ入りだけが成功ではない。高校3年間や大学4年間をやり切って別の道に進むこともある。そうした選手の目標に合わせて指導していく考えも重要で、ノグチピント氏はそうした視点も持って指導にあたっていると話す。

「チームが預かった選手をどう育てたいかが大事だと思います。選手の目標を聞きつつ、プロまで持っていきたいのか、それとも高校レベルで活躍をさせたいのか。目先の目標で変えていく必要はあります。例えば、身長が低くても3年間でチームのために何かこいつは残してくれそうだな、腐らずに最後までやり抜けそうだなと考えて選手を獲得するケースもあります。一方でプロを目指すのであれば当然要求は上がりますし、僕らもそれなりに厳しいことを求めますね」

「選手自身に考えさせる」ことの重要性

指導者に求められる“目”。選手がどこを目指しているのか、チームにどういう影響をもたらすのかも含めて、未来を一緒に作っていく必要がある。そうした地道な積み重ねを経て、次世代のGKをいかに育てていくのか。意欲があるのは大前提だが、性格的な要素も成長のために関わってくるという。

では具体的には何が求められるのだろうか。ノグチピント氏の息子で柏レイソルU-18から筑波大学に進んで現在はU-19日本代表にも入っている次男・ノグチピント天飛と接する中でもそうだが、選手自身が考えることを促す点だ。

「自分よりも大きいんですよ」

183cmのノグチピント氏はニヤリと笑いながら、息子の話を始めた。柏のアカデミーで育ち、各年代の世代別代表に継続して招集されてきた。高校時代はケガに泣かされて思うように活躍できなかったが、190cmのサイズと洗練されたGKスキルは同世代のGKにおいてトップクラスの類に入る。GKを始めたのも自然な流れだったという。

ノグチピント氏が当時プレーしていたタイのクラブを退団して帰国した時だった。家族で食事をした際に報告があった。「レイソルのセレクションに行って合格したよ」。小学3年生だった息子からの報告に思わず、頬が緩んだ。自身も席を置いた古巣のユニホームに息子が袖を通す。その事実がうれしかったが、それ以上に喜んだのが事前に父へ何も伝えなかったことだ。

「僕からしたらセレクションを受けるのであれば、一言言ってくれれば、知っているスタッフに受験の事実を伝えていたと思うんです。でも、そういうのではなく、自分の力でつかみ取りたいという気持ちがあったから言わなかったと。最初はフィールドプレーヤーで受けて、GKの適性も見たいということだったんです。結果的には、名前を見れば自分の息子というのはわかるので、GKで取りたいという目線にレイソル側がなったのもあると思うんですけどね」

「お前はどう思うの?」考える力を育てるGK指導論

自分の力でつかみ取った権利。そこから努力を重ねてきた。自身の背中を追う息子に対し、父は何も言わなかった。息子が小学生の頃である。近所の公園で一緒にボールを蹴った際、GKの技術に関しては思うことがあっても言葉を飲み込んだという。

「ある時、『GKグローブをはめるから、パパ蹴って』って言うんですよ。天飛に僕が蹴ると、結構衝撃的でグラウンダーのボールを足を広げて取っていたんです。『レイソルで教わったの?』って聞くと『そう』と言うので、僕の考えもあったので『大丈夫なの?』って聞いたら、『大丈夫』だと。足を広げて取ると後ろに逸らした際に股下を通るリスクがある。肘も開いてしまうので倒れた瞬間に後ろに逸らす可能性もあります。でも、僕はそれ以上何も言わなかったんです。クラブを信じて預けているし、そこで僕の考えを押しつけたら彼自身も混乱するので」

GKコーチによって指導理論は異なる。指導者によって違った考えがあり、その結果混乱する選手も少なくはない。そうした状況を生まないためにもノグチピント氏は口を挟まなかった。もちろん、アドバイスを求められれば、答えるケースもあったが、あくまで選手自身が考えるという大前提を踏まえて一つの意見として伝えて絶対ではないことを強調していた。

「このプレーに対して、『パパはどう思う?』って聞いてくるけど、その時に僕は『お前はどうなの?』って言うようにしていました。要するにどういう考えでプレーをしたのか。同じ場面があった時に次の対策はあるのかと。そうすると、答えてくる。なので、あくまで答えを引き出してあげることに徹していました。結局は僕が考えることではない。あくまでも選手がどうするかなんです。すると、途中から変わってきて、聞くよりも『このプレー見てよ』といった具合で自分の考えを言ってくるようになったんです。そうすると、僕も『なるほど。そういう考えで選んだのか』と僕自身すごく勉強になることが多かった。高校2年生くらいからはそんな感じでしたね」

導くのではなく寄り添う。ノグチピントが貫く育成哲学

選手に寄り添う。決して考えは押しつけない。それはGKコーチとして選手に接する時も変わらない。

「車に例えるなら、助手席に乗って道路から外れていないかを見てあげる。外れたときにハンドルを助手席側から握って方向を変えるのではなく、あくまで大丈夫かと声掛けをしてあげて、自らの意思でハンドルを切る。多少のトラブルは仕方がない。教えるという意味ではタイミングが大事。遅すぎてもダメだし、早すぎてもダメ。人の感情や考えていることをしっかり見て、今の状況はどうなんだろうなっていうのはめちゃくちゃ気にしていますね」

考える力をいかにつけさせるか。選手を混乱させないために寄り添いながら、最適解を導き出してあげる。そうした取り組みが良いGKを育てる上で不可欠。ノグチピント氏の挑戦は終わらない。新たな逸材を上のステージに送り出すべく、今日もグラウンドに足を運ぶ。

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<了>

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