武井壮が本田圭佑発起人「ONE TOKYO」の監督に就任。カギは「オフザピッチの時間」
現役プロサッカー選手、本田圭佑選手が設立したサッカークラブ「ONE TOKYO」が注目を浴びている。オンラインサロンを用いてサポーター参加型のクラブ経営を行い、サロン内の投票でさまざまな意志決定を行っていくという、いわば「リアルサカつく」を方針にかかげたこのチームで、今年、東京都社会人サッカーリーグ4部に加入したチームの初代監督として選ばれたのが、武井壮だ。サッカー経験はないというものの、言わずと知れたアスリート観と、多彩な経験値を生かして「チームにエネルギーと新たなビジョン、モチベーションを与えられる監督になりたい」と宣言している。武井監督は初めてサッカーチームを率いる立場として、サッカー界にどのような変革を起こしてくれるのだろうか――。
(※本インタビューは、2020年2月26 日に行われました)
(インタビュー=岩本義弘[『REAL SPORTS』編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、撮影=大木雄介)
これまでのサッカー監督にはないやり方で、新しいムーブメントを
今ではタレントとして多くの方に知られる存在の武井壮だが、実はアスリートとしてだけでなく、指導者としても確かな実績を持ち合わせている。「百獣の王」として芸能界にデビューする前、トップアスリートへの指導や大学でのスポーツ理論の講義もしていた。プロ野球選手やプロゴルファーのフィジカルトレーニングの指導者として著しい実績を上げ、陸上・十種競技では全日本のコーチも務めている。その指導者としての多彩な実績があるからこその今回のONE TOKYO監督就任であると考えると、「なぜ?」という疑問は期待へと変わる。
――まず、武井さんがONE TOKYOの監督に立候補された経緯について聞かせてください。
武井:もともと「俺がやってやるぞ」っていう気持ちがあったわけではなくて、(本田)圭佑も立候補していたので、彼がやるんだろうなと思っていました。
――本田選手が辞退する前に、武井さんが手を挙げたということでしょうか?
武井:はい。圭佑が「武井さんが監督をやったら面白そうですよね」みたいなことを言っていて。じゃあ、ひそかに狙ってみるか、というようなコメントを入れたら、立候補者の中に名前が入っていたという。
――最初から立候補されたのではなく、会話の流れでそうなったのですね。
武井:そうです。選挙で決めるということだったので、もし皆さんが「武井壮にやらせてみたらどうか」となれば、やってみようと。
――そもそもONE TOKYOのオンラインサロンに入ったきっかけというのは?
武井:圭佑から「ぜひ武井さんに参加してほしいです」というメッセージをもらって、その場でぱぱっと登録しました。今までサッカーは、番組にもなるべく出ないようにしていたんです。SNSなどでもなるべく発言しないようにしていたし、あんまり触れないようにしていて。
――なぜですか?
武井:情熱を持ってすごい熱量で応援したり、選手に愛情をもって接している人たちがすごく多いから、中途半端に触るとやけどするような勢いがあるので。だけど僕は本田圭佑のファンでもあるので、彼の頼みであれば……と、オンラインサロンのメンバーになって。気づけば監督になってしまったというのが、実際のところです。
――監督選挙では、ぶっちぎりの1位でした。
武井:そうですね。トリプルスコアくらい?
――東京都(社会人サッカーリーグ)4部からのスタートとなりますが、実際に監督に就任されてみていかがですか?
武井:僕の目線というのは、まさにサッカーをあまり知らない一般の人の目線。そういう角度から、東京都4部ってなんぞやというところから入りましたが、そういった、一つずつ取っていく作業というのが、僕にとっては非常に新鮮に感じています。自分の学びにもなっているし。
――このチームでは、どのようなことが期待されていると思いますか?
武井:僕がチームのプラスとなるために必要なことは、既存のサッカー監督がやっているようなスタイルとは少し違うだろうなと思っています。監督という立場ですけど、サッカーの指導を学んで、戦術を熟考してチームに落とし込むというようなことは求められていないと思うので。たぶんONE TOKYOのメンバーたちも、僕を監督に選んだということは、従来の方々がやっていない化学反応だったりを求めて投票された方が多いのではないかと。ただシンプルに監督業をこなすつもりはなくて。いろいろな新しいムーブメントを起こせたらいいなとは思っています。
新しいことを始める時、多くの人は「無理だ」と言う
――武井さんの監督就任にあたっては、さまざまな意見が飛び交ったと思います。
武井:まぁ、賛否両論いろいろなご意見をいただくだろうなとは思っていました。ネガティブな意見は想像の範囲内でしたが、その中で、想像していたよりもポジティブな意見が多かったことは、すごくうれしかったですし、意外な収穫だったなと。
――新しいことは、何をやるにしてもネガティブな意見はつきものです。
武井:新しいことを始める時って、必ずそれを難しいって思い込んでいる人は「そんなの無理に決まっている」と言い出す。あと、経験の浅い人や経験がない人が何か新しい道に入ってきた時に、半分ぐらいの人は「それは無理だ」と言うことも僕は知っているので。
――これまでの道で、それを味わってきているわけですね。
武井:そうですね。大学から陸上を始めた時も、「大学から陸上競技を始めて選手になるなんて無理」って言われました。十種競技を始めた時も、大学3年生で「これで日本一になる」と決めて始めたんですけど、最初は「十種競技だけは無理だよ」ってほぼ周りの全員から言われました。確かに種目数も多いし、中学・高校と陸上をやっていない、投てき種目も跳躍種目も未経験の僕が、「大学生のうちに十種競技で日本一になる」と言ったので。絶対無理だと言われていましたけど、結果として達成できました。
――今回、ポジティブな意見も多かったというのは、だんだん世の中の人に“武井壮”が伝わってきたということですよね。
武井:そうですね、陸上や芸能界での、僕の今までの道のりを知ってくださっている人はいるので。それで「もしかしたらあいつ、今回もやるんじゃないか」という期待を込めて、ポジティブな意見をくださっている人もいると思います。また、反対に「無理に決まっとるわ」という人も当然います。
――ついに武井さんがサッカーに入るきっかけを得たか、と期待が膨らみます。
武井:つい4、5日くらい前に、人生で初めてサッカーボールを買いまして。まずはボールを触るところから、選手がどんなフィーリングを持って触るのかとか、やっぱりそういったところが、ある程度わからないといけない。プレーの内容に口を挟むにしても、まったくその競技に触れないで指導することなんて絶対できないので。やっぱりスポーツって、見ている映像と、その中で起こっていることにはズレがあったり、乖離があるのが当たり前。それをピタッと合わせていくのが僕のスポーツのやり方です。
――具体的には?
武井:まずは、高いレベルの選手の動きを観て、頭の中にあるイメージと身体の動きを重ね合わせることで、実像がどこにどんな向きで、どういう力が入っているかということが少しずつわかってきます。その作業を重ねていって実技の成功の確率を上げることで、精度が高くなります。十種競技や、複雑な競技も2~3年でタイトルが取れるくらい競技力を伸ばせるメソッドなので。まず自分がボールを触るところからスタートして、一番成績を出している人の言葉を聞くようにしているんですよ。だから、最近そういう動画をいっぱい見ています(笑)。
――武井さんはどのスポーツにおいても、自分自身のロジックと合わせて、自分の一番得意なところからアプローチしていますよね。それは今回も同様ということですか?
武井:自分の得意なところというか、「その要素が質の高いものであれば、そのゲームを有利に進められるという絶対的な要素から着手する」というのが、僕のスポーツの論理です。技術練習などのパーツ、パーツがたくさん含まれたスポーツの中の要素一つずつを潰していくようなことは時間の無駄なので絶対にしません。「これがあれば、全体的にレベルが上がるよね」というものから着手するのが一番早いっていうことがよくわかっているので。ただ、選手たちに必要なことはポジションや、選手一人ひとりの個性でまた違うので、選手たちにはどんな能力が必要だろうかっていうのは、今想像をどんどん膨らませているところです。
スポーツにおいて強くなるか否かのカギは「オフザピッチの時間」
――初練習で実際に選手たちとリアルにつながってみて、第一印象としてはいかがでしたか?
武井:まだ未知なところがすごく多いです。要は、選手たちがどれくらいのモチベーションでいるのかというのが、まだ掴めていない。それぞれ仕事をしながら選手をやることになると思うんですけど、その中で、本当に競技に没頭して、フルタイムでやっているプロ選手と同等もしくはそれを追い抜いていくようなレベルでプレーをしたいと本気で思っている選手がどれくらいいるのか?というのは、今探っています。
――見極め中ということですね。
武井:まだ全員に向けて一言投げたくらいで、一人ひとりと話したことがなく、コミュニケーションが足りていない状況なので。まったく全容も把握できていないし、選手の能力に関してもフィジカルテストを行っていないので、どれくらいの能力の選手がいて、どれほどのポテンシャルがあるのかというのも僕自身の中で把握できていません。今どれくらいのレベルにいて、どのくらいのレベルまでなら戦えるのか想像がついていないため、まだ何とも言えないんですけど。でも、みんなピッチに入ると想像以上に熱量が高く、自分の能力をこの場で見せてやろうという熱意は感じました。
ただ、練習時間以外のオフザピッチにおいて、例えば日常生活の中で寝ている時以外は、何かしら意識していると思うんです。僕は寝ている時でも気温や湿度などをコントロールして、体調管理していましたけど、ピッチを出ても、オンザピッチでキーンって研ぎ澄まされた時のようなフィーリングをどれだけ持てるかっていうのが、きっと彼らの成長を左右すると思うんです。
――確かに。
武井:ピッチの中にいる時間で成長してきた能力というのは、彼らが今持っている能力そのままだと思うので、それ以外の時間をどれだけ、サッカーに生かす能力を手に入れるためにフォーカスできるか、使えるかというのが、彼らのこれからの勝負。それが、もしかしたらサッカーだけで飯を食っていけるようになるかもしれない、日本のトップレベルの選手になれるかもしれないっていう階段だと思うので。そこをうまく生かせなかったら、結局、今まで歩んできたサッカー人生で今いる位置が彼らの場所で、ワンランク上には届かない。それ以外の時間でどれだけフィジカル能力を向上させて、最高な状態で毎日ピッチに立てるか。もしくは毎日、何かしらの能力が伸びた状態で次のピッチに立つということを日々していかないと。
――そのために、具体的にはどういう指導をしていくのですか?
武井:まずはフィジカル面から改善させていきたいと考えていますが、フィジカルが改善した状態において、自分の技術がそれに適応できるのか。例えば、スピードが上がったところでも、同じようなドリブルができるのか。スピードを上げた時にそれが適用できなかったら、何も使えやしないわけです。シュートをする時も、筋力が上がれば、蹴るタイミングも変わってきたりいろいろなことが起きるので。能力だけは毎日必ずしっかり伸ばしていって、さらに、ピッチの中でその能力を使って、ボールを思いどおりに運ぶという作業を、彼らには実行してもらわないといけない。日常においてこれからの毎日を、どれだけ彼らが確実に、自分の能力を伸ばすために使えるかっていうところに最も焦点を置いて、このチームを見ていこうと思っています。
その中で、彼らが「今まで自分の体でこんな動きができたことがない」「こんなに速く進めたことがない」とか、「こんなに強く体を動かせたことない」っていう瞬間を日々与えていけたらいいなと。そうして、さまざまな面で自分のサッカーを拡張する要素になってくれればいいなと、今は思っていますね。
――練習の時だけではないですからね。
武井:練習時間って、いくらがんばっても一日に2~3時間くらいですよね。しかも、本気で集中している時間なんて、おそらく10~20分だと思うんです。試合中でも、気を抜いてる時はあるし。陸上選手だって、例えば400mのスプリントを10本やれと言われたら、「マジか、地獄だな」って思うんですよ。400mなんて40何秒で走れるので、500秒以内に終わります。本気で走っている時間というのは、トップアスリートがする地獄のようなメニューでさえ10分もないんですよ。本気で一歩一歩地面に触れて進んでいく感覚を体に得ながら、自分の機能をなるべく使い果たさないようにセーブしてコントロールしつつ、その中で一番速く進める能力というのを発揮しようとしている時間というのは、400mを10本走ったって500秒ないわけです。ということは24時間中、残り23時間50分はお休みなんですよ。その10分しかない時間に、どれだけ自分の体を最高の能力を出すために使えるかというのが、スポーツにおいて強くなるか否かのカギなので。
――なるほど。
武井:いくら練習で「誰より一生懸命努力して頑張りました」と言っても、それ以外の時間を雑な使い方をしていたり、まったく身体機能が向上しないような時間を過ごしていたら、ただの「サッカー好きのお兄ちゃん」で終わってしまうと思うんです。そんなレベルだったら、東京都4部から抜けられないと思います、正直言って。10年でJ1なんて夢物語だし。東京都4部にも強いチームがいくつかあるというのは聞いているので、そこを抜けて上へ上がることも、そんなに簡単ではないだろうなと。
最初の年は、彼らのこれまでの積み重ねで勝負しなきゃいけないので、もしかしたら来年以降というのが、本当に今年積み上げた力を発揮する時間じゃないかなと、僕は踏んでいます。なるべく早く、彼らにそういう可能性をバトンパスできるような仕組みをチームでつくっていけたらうれしいなと思っていますけど。これまでの指導や、経験してきたトレーニングでは手に入れられないものを彼らにプレゼントすることができるんじゃないかなと思っているので。過去最高の状態でサッカーをする時間だけでなく、それ以外の時間が彼らにとってどれだけ重要かということを伝えていきたいというのは、本田圭佑も同意見です。「そういったところを徹底して武井さんお願いします」というメッセージを受けていて、チームの発起人である彼と、監督の僕とで意見が一致していることです。
選手にとってのモチベーションは「実際に自分の能力が伸びていること」
――発起人である本田選手は、サッカーにおいて強いこだわりがあると思います。その部分について、監督と発起人の間でコミュニケーションをとっているのでしょうか。
武井:とっています、ある程度。先日、戦術面やコーチをどうするかなどについてLINEを送ったら、すぐにブラジルから電話がかかってきて。「引いて守るようなことはしません」と。「前からガンガン当たっていってボールを奪って、ガンガン攻め込んでいくサッカーをしてほしいんです」というメッセージをもらいました。コーチも選任中という段階なんですけど。
――コーチは選挙では決めないですよね?
武井:そうですね。フィジカルも含めて考慮して、ベストな人選をしたいと考えています。
――チームの練習は、どれくらいの頻度で予定しているのですか?
武井:本田圭佑いわく「(トレーニングが)休みの日以外は、仕事のあと必ず毎日参加してほしい。基本、それができるメンバーを選んでいるつもりなんで」と。だから、今のところ予定しているのは週6くらいでしょうか。
――すごいですね。休みは1日だけということですね。
武井:はい。そういう要望はいただいているので。
――(東京都社会人サッカーリーグを戦う上で)それだけで圧倒的に強いです。
武井:でもそれだけでは、それをやっているチームと同じレベルにしかならないので。
――4部で、やっているチームがあるのですか?
武井:どうなんでしょう。大学のチームにはありますよね。
――大学はあるんですね。
武井:同じブロックにいるらしいのですが、東京経済大学とか。2軍のチームなんですけど、フィジカル的にはけっこう優れた選手が多いと思うので。短い期間ですけど、そういったチームに勝ち切れる何かが彼らの中に芽生えたら。「あ、このままやっていけば俺の能力は伸びていくな」っていうモチベーションのような。スターになりたいとか、プロになってJリーグへいきたい、なんていうのは、夢や希望であって、モチベーションにはならないんですよ。やっぱり選手にとって何がモチベーションになるかといったら「実際に自分の能力が伸びていること」。これしかないと思っているので。
とにかく、彼らの中に「ここで毎日こういうことをやっていたら、本当に俺うまくなっているじゃん、成長しているじゃん」っていうのを毎日実感できていることっていうのが、アスリートにとっては一番のモチベーションです。どんな高い希望を持っていても、そのモチベーションがなかったら、アスリートなんてあっという間に折れます。やる気がなくなりますし、情熱は冷めます。自分なりにやっていく中で、偶然何かのきっかけでうまくいけばいいか、くらいの選手になってしまいますから。だから、そこが折れるようなチームにはしたくないなと。
選手たちが試合に負けようが、何をしようが、毎日「いや、前の試合よりも確実に自分が良くなっている」と全員が思うチームにすること。見ている人たちにも「ONE TOKYOは点数では負けたけど、これが本当にまとまり出したらやばいな」って毎回思わせるような、プレーする側も見る人も、指導する側もモチベーションを実質的に感じられるチームにするというのは、スポーツをやる上ですごく有効だと思っています。そういった共通の意志を持てるようにしたいし、彼らが自分でトレーニングを行う時にも、正しい選択ができるような思考回路をメソッドとして埋め込めたらなと考えています。そこは僕にとっても、チームの監督という指導者の立場で携わるのは初めての経験なので、ひたすら、そこにモチベーションを感じ続けながら、このチームに携わっていきたいという思いはありますね。
一流選手加入の可能性もゼロではないのが「ONE TOKYO」
武井:ただ、開幕から3連敗して解任っていう可能性もゼロではありません。ONE TOKYOのオンラインサロン内で、解任動議が発動される可能性だってありますから。僕の解任が妥当だということになったら、6月ぐらいにはフィジカルコーチ補佐とかになっているかもしれません(笑)。うちでは全部オンラインサロンで決めますので。可能性でいえば、本田圭佑が今後ONE TOKYOでプレーする可能性もゼロじゃないですから。
――可能性でいえば、ありますよね。
武井:全然可能だし、むしろ、東京都4部で本田圭佑がプレーしたらどうなるか、こんな素敵な夢ないでしょうというのは、僕の中にあります。もしチャンスがあったら監督として、まず最初にスカウトしにいくのはケイスケホンダですから。
――(ルカ・)モドリッチとか(キリアン・)エンバペがほしいというコメントもありましたが。
武井:ぶっちゃけそこは、ほぼとれないですけど(笑)。脅威の新規加入選手も、もしかしたらあるかもしれないですよ。
――乙武(洋匡)GMの人脈もありますしね。
武井:乙武君だけじゃなく、仲間や実業家たちのつながりもこのチームには山ほどありますから。それらの人脈を介して、ビックマネーで一流選手の獲得みたいなことも、ゼロではないと思うんです。それが可能なのがONE TOKYO だと思っているので。だから、みんながニュースを見聞きするたびに「まじかよONE TOKYO、俺もいっておけばよかった」とか、「このチーム魅力的だわ」と常に感じられるような、見る側もずっとモチベーションを持てるチームにしたい。エンターテインメントの意味でも、例えば選手の露出など、プラスの部分を埋められたらいいなと思います。
――巻き込み力が、ものすごいですものね。
武井:巻き込み力だけは日本一。全員が本気を出したら、恐ろしいチームになるなって。まだ、お金の面に関しては僕のブレインとか一切使っていませんし。
「ONE TOKYOに入ると人生が豊かになる」というメッセージを伝えていきたい
――選手たちも、この記事を読んで気合いが入ると思います。
武井:ただ、やる内容が大事なので。例えば、「努力」ってひとえに言いますけど、ピッチ以外のところを努力したとしても、競技力に直結しないことは山ほどありますから。だけど、そういう無駄な努力ってスポーツ業界には山ほどあるんですよ。そういったところから脱却して、本当に必要なものに対して必要な時間を費やすっていうことが、スポーツをやる上で一番のモチベーションになる。最小限の努力で最大限の成果を出すという、これ以上のモチベーションが上がることってないんですよ。だから逆に、努力の量が増えても成果が低くなっていくと、選手のモチベーションはどんどん消えていきます。
だからこそ、そこの時間にコミットさせるための本質的な情報や知識を選手たちに与えるということが、非常に重要。それができるかどうかで、僕が監督として3試合で解任になるのか、あるいは負けたとしても、僕に監督は続けさせて、他の部分を工夫しようという議論になるのか。そこについて、ベストな選択をしていきながら、彼らに何を与えられるか、自分の中でしっかりと核を持って接していきたいと思っています。そんなことができる監督は、日本に僕以外、今はいないと思っているので。そこは自信をもって選手たちと接したいなと。
――実際のところ、武井さんの多忙なスケジュールの中で、通常の練習ではどうしているのですか?
武井:全部の練習に出るのは不可能ですが、仕事の合間でも少しでも顔を出せる時には現場に行きたいな、と。10分でもフィジカルの動きを見れば選手の能力がどれくらい高まっているかはすぐわかるので。サッカーの能力に関しては、それがわかるスタッフたちにある程度任せています。あとは動画で、すべての練習や試合の映像をアーカイブしてもらって見られるようにしてもらおうと考えているので、空いた時間に映像で確認したり、スタッフたちとミーティングをしながらチームを動かしていくことは可能だと思っています。遠隔操作が多くなるので、奥山(大[ONE TOKYO運営責任者])くんに頼んで、ホットラインとして選手全員と僕のFacebookメッセンジャーグループをつくってもらいました。そこでは、日ごろ僕が彼らに、ピッチ外でどういうことを意識してほしいかというのを発信していく場にしていこうと考えています。それが彼らのフィジカル向上の手助けになると思いますし。
――すごいですね。まるで、武井さんのオンラインサロンのようです。
武井:僕個人のオンラインサロンは、また別に、これから始まります。
――それは記事に載せても大丈夫ですか?
武井:はい。ONE TOKYOのメンバーは、僕とのつながりを特別に持つことになると思いますので、取れるものは全部取ってジャンプアップを果たしていただきたいですね。僕が暇な時は「おい、誰か飯行くぞ」って連れて行くこともあるかもしれないし、いろいろな形で選手たちとコミュニケーションをとっていけたらいいなと。
――選手たちにとってはとても貴重な経験となりますね。
武井:僕にとっても、僕みたいなタレントがいきなりサッカーの監督になっているわけで。監督として取材をもらったり、街で「監督」って呼ばれたりするんですよ。「ONE TOKYO、マジで応援しています」とか、本当にいろいろな人が声をかけてくれるんですよ。「最初は大変でしょうけど」とか言っていただけて、なんだか、すごく温かいなと思って。ただ、とんでもない試合をしたり、負けたりしたら、鬼のようにひっくり返るのもサッカーファンの素敵なところだと思っているので、賛否両論たくさん受けつつ……。
――試合やチーム状況の情報発信力も、すごそうですよね。
武井:そうですね。Twitterでつぶやいただけでニュースになるので、恐ろしいですよ、もう。余計なことは言えません(笑)。そういう意味では、他の東京都4部のチームとはまったく違う、露出度や話題性、注目度の高さを圧倒的にキープできるチームだと思います。うちには、情報発信力のある豪華なメンバーたちがいるので頼もしいです。
――最後に、このONE TOKYOの監督を通じて成し遂げたいことは?
武井:本田圭佑ともいろいろ話をしているんですけど、彼は「サッカーを通じて、平和で幸せな世の中をつくる」というメッセージを持っています。チームが実力をつけて強くなっていくことは、その目標に向けた一つの手段です。選手たちには、それ以外の生活においてもより豊かな人生を送るための要素をたくさん与えてあげたいなと思っています。だからONE TOKYOは、サッカーチームもそれ以外の活動も非常に魅力的で、それぞれの人生が確実に豊かになる、そういう場所にできればいいなと考えているので。
そこには、僕自身が協力できることがたくさんあるだろうし、本田圭佑はもちろん、チームのメンバーも選手たちも、非常に社会的にも実力のある人間たちが本当にゴロゴロと集まってきているので。片っ端から巻き込んで、「え、サッカーチームじゃなかったの?」っていうような活動も展開していけたらいいなと思っているので、随時発表していきたいなと。
――まさに、これまでのサッカーチームにはないチームづくりで、それぞれがONE TOKYOに関わっていくということですね。
武井:そうですね。さまざまな化学反応がたくさん起こせればと思っています。サッカーチームをやっていて、あんなことができるんだ、とか。「ONE TOKYOに入ると、人生が豊かになる」というようなメッセージを発信していきたいですね。当然サッカーが良くなって、サッカー選手としての人生が豊かになる選手も出てきてほしいですしね。
――こんな話を聞いたら、途中から移籍してくる人も現れそうですね。
武井:全然ウェルカムです。どんどん来てください!
【後編はこちら】武井壮が明かす「特性を伸ばす」トレーニング理論 日本人選手の持つ「伸びしろ」とは?
<了>
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PROFILE
武井壮(たけい・そう)
1973年生まれ、東京都出身。タレント。1997年、中央学院大学時に陸上・十種競技で日本チャンピオンとなる。卒業後、アメリカへのゴルフ留学、台湾プロ野球チームでのコーチ就任を経て、2005年に茨城ゴールデンゴールズに入団。2012年からは「百獣の王」として芸能界デビューを果たし、現在はスポーツ番組、バラエティから情報番組や大河ドラマまで、幅広いテレビ番組に出演。そのかたわらで独自のスポーツ理論をもってさまざまなスポーツへのチャレンジも続けており、世界マスターズ陸上4×100mリレーでは金メダルを獲得、現在はビリヤードのプロ資格も目指している。2020年2月に、本田圭佑選手が設立した東京都社会人サッカーリーグ4部のサッカークラブ「ONE TOKYO」の初代監督に就任。
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