[グランプリファイナル 歴代国別ランキング]1位はロシア、2位は日本ではなく……
12月5日にイタリア・トリノで開幕する、フィギュアスケートのISUグランプリファイナル。日本人選手では羽生結弦が3大会ぶりの金メダル、紀平梨花が連覇に挑むことになる(羽生は過去2大会欠場)。
数多くのドラマを生んできたグランプリファイナルだが、これまでに最も成績を残してきたのはいったいどの選手で、どこの国だろうか? 今回は過去24大会の成績をもとに、選手別、国別のランキングを作成した。ぜひ予想しながら読み進めてほしい。
(文=REAL SPORTS編集部、写真=Getty Images)
全24大会の結果からランキングを作成!
簡単にISUグランプリファイナルについておさらいしておきたい。
グランプリファイナルは、毎シーズン10~12月頃に開催されるISUグランプリシリーズの決勝大会という位置づけで、現在はアメリカ、カナダ、中国、フランス、ロシア、そして日本(NHK杯)で開催される6大会の成績上位6選手(組)が出場を許される。
今シーズンは、男子シングルでは羽生結弦が1位の成績で、女子シングルでは紀平梨花がロシア勢3人に次ぐ4位の成績でグランプリファイナル進出を決めている。残念ながら、ペアとアイスダンスに日本人選手の出場はかなわなかった。
今回、グランプリファイナルの過去24大会(※)の成績を集計し、選手別、国別のランキングを作成した。
(※1995-96~1997-98シーズンのISUチャンピオンシリーズファイナルの呼称時期を含む。1998-99シーズンから現在のグランプリファイナルへと改称)
ランキングの作成方法は以下の通り。
・1位=6Pt、2位=5Pt ~ 6位=1Ptを付与 (※編集部追記:本記事におけるランキング作成のための独自ポイントで、ISUが付与しているポイントとは無関係)
・開催シーズンや種目によって出場選手(組)数が6でない場合もあるが、順位に応じて付与するポイントは変わらない。(4人しか出場していない場合、1位=6Pt~4位=3Pt。7人以上出場の場合、7位以下は0Pt)
・男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスごとに集計したランキングを作成
・4種目を合計した総合ランキングを作成
男子シングル、オリンピック連覇の羽生結弦を抑えて1位に輝いたのは?
それでは最初に、男子シングルから見てみよう。
最も成績を残した選手は、皇帝エフゲニー・プルシェンコ(ロシア/引退)だった。4つの金メダルに加え、銀2つ、銅1つと計7つのメダルを取り、40Ptで堂々の1位となった。わずか15歳で世界選手権の表彰台(3位)に上ったプルシェンコは、オリンピック2回、世界選手権3回、欧州選手権7回と、主要な大会で数多くの優勝を飾り、まさにフィギュアスケート界のレジェンドといえる存在だけに、この結果にも納得だろう。
そのプルシェンコに幼いころから憧れを抱いていた羽生結弦が2位に入った。2013-14シーズンから4連覇を果たし、32Ptを獲得した。平昌オリンピックでは男子シングルで66年ぶりとなる連覇を達成するなど、今や世界中の誰もが認める世界一のスケーターへと上り詰めた羽生も納得の順位といえるだろう。むしろケガの影響で過去2大会を欠場していなければ、プルシェンコを抜いてトップに輝いていた可能性もあった。いまだ進化を止めない羽生が今大会でどのような成績を残すのか、楽しみで仕方がない。
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1. エフゲニー・プルシェンコ(ロシア/引退) 40Pt=金4、銀2、銅1
2. 羽生結弦(日本) 32Pt=金4、銀1
3. 髙橋大輔(日本) 30Pt=金1、銀3、銅1
3. パトリック・チャン(カナダ/引退) 30Pt=金2、銀1、銅1
5. アレクセイ・ヤグディン(ロシア/引退) 22Pt=金2、銀1
6. 織田信成(日本/引退) 21Pt=銀2、銅2
6. エルビス・ストイコ(カナダ/引退) 21Pt=金1、銀3
8. ハビエル・フェルナンデス(スペイン/引退) 20Pt=銀2、銅1
9. 宇野昌磨(日本) 18Pt=銀2、銅2
10. ネイサン・チェン(アメリカ) 17Pt=金2、銀1
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国別ランキングは、以下の通り。
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1. 日本 122Pt=金5、銀9、銅6
1. ロシア 122Pt=金8、銀5、銅4
3. アメリカ 89Pt=金4、銀2、銅8
4. カナダ 74Pt=金4、銀6、銅1
5. フランス 23Pt=金1、銅2
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日本とロシアが同点1位となっている。日本は最多20個のメダルを、羽生結弦、髙橋大輔、織田信成、宇野昌磨、小塚崇彦の5人で獲得している。ロシアは最多8個の金メダルをはじめ17のメダルを獲得した。だが、ロシアが1990年代から2000年代初頭に多くのメダルを獲得していたのに対し、日本は2005-06シーズンから14大会連続でメダルを獲得していることからも分かるように、近年は日本が圧倒的に優勢となっている。今大会は日本から羽生が出場するのに対し、ロシアからは21歳のアレクサンドル・サマリンと、20歳のドミトリー・アリエフの2人の出場が予定されている。
また3位のアメリカは、最多8人のメダリストを輩出しているのは興味深い。メダル数やポイントでは日本とロシアの後塵を拝しているが、スポーツ大国アメリカの裾野の広さが感じられる結果となっている。
女子シングル、絶大な人気を誇った浅田真央を抑えて頂点は?
女子シングルで最も成績を残した選手は、ロシアの妖精、イリーナ・スルツカヤだった。オリンピックこそ金メダルは無いものの、世界選手権2回、欧州選手権は最多7回の優勝を誇る彼女が、最多タイ4つの金メダルで50Ptを獲得し、堂々の1位に輝いた。大本命と目され挑んだトリノオリンピックで銅メダルに終わり、笑顔で「That’s life」と口にした姿が印象に残っているファンも多いだろう。
2位は、2017年4月に引退した浅田真央が入った。2005-06シーズンにわずか15歳でグランプリファイナルに初出場し、世界女王のスルツカヤを破っていきなり金メダルを獲得するなど、最多タイ4つの金メダルで35Ptを獲得した。またシングルでは男女を通じて史上初となるグランプリシリーズ全7大会制覇という記録も持っている。記録と同時に記憶にも残る演技を見せてくれた浅田が納得のランクインとなった。
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1. イリーナ・スルツカヤ(ロシア/引退) 50Pt=金4、銀3、銅2
2. 浅田真央(日本/引退) 35Pt=金4、銀2
3. ミシェル・クワン(アメリカ/引退) 26Pt=金1、銀4
4. キム・ヨナ(韓国/引退) 23Pt=金3、銀1
5. カロリーナ・コストナー(イタリア) 22Pt=金1、銀1、銅2
5. マリア・ブッテルスカヤ(ロシア/引退) 22Pt=銀1、銅2
7. アシュリー・ワグナー(アメリカ) 19Pt=銀1、銅2
8. 鈴木明子(日本/引退) 16Pt=銀1、銅2
8. 安藤美姫(日本/引退) 16Pt=銀1
10. エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア) 15Pt=金1、銅1
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国別ランキングは、以下の通り。
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1. ロシア 173Pt=金8、銀8、銅9
2. 日本 135Pt=金6、銀7、銅5
3. アメリカ 94Pt=金5、銀6、銅4
4. 韓国 23Pt=金3、銀1
5. イタリア 22Pt=金1、銀1、銅2
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ロシアが貫録の1位となった。最多25個のメダルに、最多8個の金メダルを獲得し、最多11人のメダリストを輩出している。2006-07~2010-11シーズンの5大会にわたってメダルを逃す時期はあったものの、常にその強さを見せ続けているといっていいだろう。特に2014-15シーズン以降は5大会連続で2人を表彰台に上らせている。昨シーズンこそ紀平に金メダルを奪われたものの、その前の4大会は金メダルも獲得している。今大会はアリョーナ・コストルナヤ、アレクサンドラ・トゥルソワ、アンナ・シェルバコワ、アリーナ・ザギトワの4人が出場を予定しており、女子シングルでは史上初となる表彰台独占の可能性すら感じさせる陣容となっている。
日本は6つの金をはじめ18個のメダルを獲得し、堂々の2位となった。浅田真央、鈴木明子、安藤美姫、宮原知子、村主章枝、荒川静香、中野友加里、紀平梨花、村上佳菜子と、ロシアに次いで9人がメダリストとなった。今大会は紀平梨花が出場を予定している。ロシア勢の包囲網をかいくぐり、見事連覇を果たすことはできるだろうか。
4位韓国と5位イタリアは、キム・ヨナとコストナーが一人で稼ぎ出したポイントで国別ランキング入りしている。まさに両国にとってレジェンドといえる存在であると同時に、新たなスターの誕生が待ち望まれる。
ペア、1位は世界選手権での演技後に氷上のプロポーズを行った……
続いて、日本ではなじみの薄いペアを見てみよう。
1位には中国の申雪&趙宏博ペアが輝いた。1992年からペアを組んだ二人は、オリンピックではバンクーバーの金を含む3つのメダル(銅2)を獲得、世界選手権では3度、四大陸選手権で2度、グランプリファイナルでは6度の優勝を飾った、中国が世界に誇るペアだ。2007年の世界選手権フリー終了後、趙宏博が申雪に対して氷上プロポーズをしたのは有名な話だ(申雪はプロポーズと認識しておらず空振り、その夜あらためて趙宏博がプロポーズを行い、申雪もこれを快諾した)。
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1. 申雪&趙宏博(中国) 52Pt=金6、銀1、銅2
2. アリオナ・サフチェンコ&ロビン・ゾルコーヴィ(ドイツ) 41Pt=金4、銀1、銅3
3. マリア・ペトロワ&アレクセイ・ティホノフ(ロシア) 27Pt=銀1、銅3
4. メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード(カナダ) 26Pt=金1、銀1、銅2
4. 張丹&張昊(中国) 26Pt=銀1、銅3
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国別ランキングは、以下の通り。
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1. ロシア 182Pt=金7、銀11、銅9
2. 中国 149Pt=金7、銀9、銅9
3. ドイツ 62Pt=金6、銀2、銅4
4. カナダ 58Pt=金3、銀1、銅2
5. フランス 17Pt=金1、銀1
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興味深いのは、男子シングル、女子シングルとはかなり顔触れが異なる点だ。男女シングルではともにランクインしていた日本、アメリカが入っておらず、中国、ドイツがその強さを見せている。
アメリカはこれまで5組が出場しており、残念ながらメダル獲得はゼロとなっている。ちなみに日本出身の選手として、伊奈恭子と井上怜奈がアメリカ代表としてそれぞれ2大会出場を果たしている。
日本代表としては、高橋成美&マーヴィン・トラン ペアが2011-12シーズンに出場を果たしているが(結果は6位)、残念ながら24年の歴史の中で日本代表が出場したのはこの1回のみとなっている。
アイスダンス、1位は髙橋大輔が憧れとして名前を挙げたカップル
最後に、髙橋大輔が2020年1月から村元哉中をパートナーとして転向すると発表したことでにわかに注目を浴びているアイスダンスを見てみよう。
1位は2組で、一組はメリル・デイヴィス&チャーリー・ホワイト カップル。ともに1987年生まれでご近所さんだった二人は、まだ幼い1997年にカップルを組んだ。オリンピックではバンクーバーで銀、ソチで金メダルを獲得し、世界選手権で2度、四大陸選手権で3度、グランプリファイナルでは史上最多5連覇、全米選手権では史上最多6連覇を達成するなど、アメリカが誇るカップルだ。
もう一組はテッサ・ヴァーチュ&スコット・モイア カップル。幼いころからカップルを組んだ二人は、ソチでこそメリル・デイヴィス&チャーリー・ホワイト カップルに金メダルを譲ったものの、バンクーバーと平昌で見事に優勝。世界選手権、四大陸選手権で3度の栄冠に輝いている。残念ながら、今年9月に引退を発表したばかりだった。
実はこの2組はともに、髙橋大輔が憧れのカップルとしてその名を挙げている。バンクーバー、ソチ大会当時にヴァーチュー&モイア、デイヴィス&ホワイトを指導していたマリーナ・ズエワ コーチが、村元&高橋を指導するというのだから楽しみだ。
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1. メリル・デイヴィス&チャーリー・ホワイト(アメリカ) 34Pt=金5、銅1
1. テッサ・ヴァーチュ&スコット・モイア(カナダ) 34Pt=金1、銀5
3. マリナ・アニシナ&グウェンダル・ペーゼラ(フランス) 28Pt=金1、銀2、銅3
4. タチアナ・ナフカ&ロマン・コストマロフ(ロシア) 23Pt=金3、銀1
4. イリーナ・ロバチェワ&イリヤ・アベルブフ(ロシア) 23Pt=金1、銀1、銅1
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国別ランキングは、以下の通り。
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1. ロシア 121Pt=金8、銀6、銅2
2. カナダ 97Pt=金5、銀7、銅2
3. アメリカ 94Pt=金6、銀4、銅4
4. フランス 82Pt=金3、銀4、銅9
5. イタリア 36Pt=金1、銀1、銅2
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1位はロシア。これで4種目全てにおいて1位を獲得したことになる。まさにフィギュア大国の面目躍如といえるだろう。その他、カナダ、アメリカ、フランスと競技の盛んな国が並んでいる。
残念ながら日本はこれまで一度もグランプリファイナルに進出したことがない。来シーズン以降、村元&高橋カップルが出場すれば、大きな注目を浴びることは間違いないだろう。ちなみに村元自身は、クリス・リードとカップルを組んで2017-18シーズンの四大陸選手権で日本初となる銅メダルを獲得した経験を持つ。
総合1位はロシア! 日本は何位に?
では、4種目合計の総合ランキングを発表しよう。以下の通りの結果となった。
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1. ロシア 598Pt=金31、銀30、銅24
2. アメリカ 289Pt=金15、銀12、銅16
3. 日本 258Pt=金11、銀16、銅11
4. カナダ 250 Pt=金12、銀14、銅8
5. 中国 166Pt=金7、銀9、銅10
6. フランス 122Pt=金5、銀5、銅11
7. ドイツ 70Pt=金6、銀3、銅4
8. イタリア 60Pt=金2、銀2、銅4
9. 韓国 27Pt=金3、銀1、銅1
9. ウクライナ 27Pt=銀1
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1位は当然、ロシア。4種目制覇はさすがの一言だ。2位はアメリカ。ペアこそメダルは無かったものの、それ以外の3種目でトップ3入りを果たしている。
我が日本は3位。ペアとアイスダンスでメダルが無かったことが響き、アメリカの後塵を拝した。それでもこれまでに記録にも記憶にも残る素晴らしいスケーターを何人も輩出してきたことは誇りに思っていいだろう。
4位カナダが4種目で万遍なくポイントを稼いだのに対し、5位中国はほぼペアでポイントを稼いでいたのは対照的だった。
上位6カ国は、グランプリシリーズを開催している国と重なった。それだけこの競技の人気が高く、競技レベルに結びついていることの証左ともいえるだろう。
これからフィギュアスケート界の勢力図はどう変わっていくのだろうか。今回のグランプリファイナルでその一端が垣間見えるかもしれない。
<了>
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