
侍ジャパンに最も選手を輩出したプロ野球12球団はどこだ? 1位と2位は接戦で…
侍ジャパンに最も選手を送り込んでいるプロ野球12球団はどこか――?
2012年より常設化し、強化を進めている野球日本代表チーム「侍ジャパン」。今年11月には第2回となるWBSCプレミア12が開催される。これまでに開催された国際大会から、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)4大会とプレミア12の計6大会に選出された選手の所属チームを集計し、ランキングを作成した。果たして1位に輝いたのは?
(文=花田雪、写真=Getty Images)
国際化の波が押し寄せてきた野球界
2006年に第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催されて以降、野球界にも遅ればせながら「国際化」の波が押し寄せてきた。それまでは各国の国内リーグのみが野球選手の「プレーする場所」だったが、メジャーリーガーも含めた一流選手たちが集う国際大会が生まれたことで、多くの野球ファンが初めてナショナリズムを感じながら野球を見るという経験をしたはずだ。
現在、日本のプロ野球界は日本代表=侍ジャパンを常設化。サッカー日本代表のように、国際大会だけでなく定期的に親善試合を行うなどして代表強化に着手している。
過去に行われたWBCの盛り上がりもあり、今ではプロ野球、さらにはその下のカテゴリである高校生や大学生にも将来の目標に「侍ジャパン」を挙げる選手は増えてきた。
本稿では2006年開催のWBC以降に行われた国際大会に選出された全選手をリストアップ。球団別に最も多く侍ジャパンに選手を輩出したチームはどこかをランキング化した。対象とする大会は第1~4回WBCと、第1~2回のプレミア12の6大会(2019年大会は10月24日発表時のメンバーでカウント)。五輪についてはシーズン期間中でメジャーリーガーの不参加や2004年のアテネ五輪に「1球団2選手」という制約があったことなどから対象外とした。
また、同じ選手が複数大会に参加した場合、例えば第1回と第2回のWBCに参加した場合はカウントを「2」とする。
代表選出の傾向は?
ランキングの解説をする前に、代表選出の傾向を分析しておきたい。対象とする大会は全て、プロ野球のオフシーズンに行われている。つまり、代表選考における最も重要な基準は大会直前に行われたシーズンの成績になる。野球というスポーツは、投手であれば勝利数、防御率、奪三振率、ホールド数、セーブ数、打者であれば打率、本塁打、打点、盗塁など、個人の能力が直接的に数字に反映されやすい。近年ではセイバーメトリクスによる指標やスタットキャスト、トラックマンといった最新技術の発達で、より選手の能力を客観視できるようになってきた。いくら実績がある選手でも、実力が落ちてくればすぐに数字に反映されるシビアな一面を持っているのだ。逆を言えば、それまでほとんど実績がなかった選手であっても、大会前年に一気に飛躍して数字を残せば、代表に選出される可能性が高くなる。
実際に大会別の選手輩出数を見てみると、その傾向は顕著に表れている。例えば第1回WBCを例に見てみよう。この大会に最も多くの選手を送り込んだのは前年日本一の千葉ロッテマリーンズだ。その数、実に8人。チームの結果が出るということは当然、個人でも優秀な成績を残した選手が多かったということ。各大会のメンバーを見ても、直近シーズンで優勝したチーム、もしくは上位に入ったチームから多くの選手が選出されている。
それらの傾向を踏まえてランキングを見てみたい。
1位 福岡ソフトバンクホークス 28
2位 読売ジャイアンツ 26
3位 埼玉西武ライオンズ 17
4位 北海道日本ハムファイターズ 14
5位 東京ヤクルトスワローズ 13
6位 広島東洋カープ 12
7位 東北楽天ゴールデンイーグルス 11
7位 千葉ロッテマリーンズ 11
9位 横浜DeNAベイスターズ 10
10位 中日ドラゴンズ 8
11位 阪神タイガース 7
11位 オリックス・バファローズ 7
(番外)
シアトル・マリナーズ 3
テキサス・レンジャーズ 1
タンパベイ・レイズ 1
ヒューストン・アストロズ 1
ボストン・レッドソックス 1
シカゴ・カブス 1
ソフトバンク内川聖一は野手で唯一のWBC3大会連続出場
1位はソフトバンクの28名。これは、誰もが納得できる結果だろう。2005年以降のシーズン成績を見るとリーグ優勝が5回、日本一が6回。ちなみに、その全てを2010年以降に記録しており、近年のプロ野球界を圧倒的な戦力で牽引してきたことが分かる。その象徴といえるのが、WBCで第2回から3大会連続出場を記録している内川聖一だ。
昨年、通算2000本安打を記録した日本が誇る安打製造機。「右のアベレージヒッター」という、近年の野球界では希少なタイプの打者であり、なおかつコンスタントにシーズン打率3割以上を記録(2008~2014年まで7年連続)する安定感が評価された形だ。ちなみに、侍ジャパンで3大会連続WBC出場を果たしたのは野手では内川のみ。投手では杉内俊哉が記録しているが、第4回大会で連続出場は途絶えている。
2021年に行われるWBCでの「4大会連続出場」は正直厳しいと言わざるを得ないが、それでも国際大会での実績でいえば国内屈指と言っていいだろう。
巨人は大会ごとに違う選手をコンスタントに送り出している
ソフトバンクに次ぐ2位は巨人の26名。近年は坂本勇人、菅野智之以外はいわゆる「スター選手」に恵まれない印象を受けるが、2005年以降でも12球団最多の7度のリーグ優勝を誇っており、「球界の盟主」と呼ぶにふさわしい成績を残している。
ただし、WBC連続出場となると阿部慎之助、内海哲也、坂本勇人の2大会連続が最多。「チームの主力」として2大会連続でプレーしたといえるのは坂本くらいだ。逆を言えば、大会ごとに違う選手をコンスタントに侍ジャパンに送り込んでいるともいえる。厚い選手層と「勝ち方を知っている」球団の伝統が、26名という侍ジャパン選出数から透けて見える。
2000年代のセ・リーグを牽引した中日は8選手のみ
このように、歴代の侍ジャパン輩出数とチーム成績は、ほぼ比例するといっていい。直近の優勝が1996年と、12球団で最も優勝から遠ざかっているオリックス・バファローズの侍ジャパン輩出数が最下位タイの7名という点からも、その傾向は明らかだろう。
ただし、例外も存在する。もっとも象徴的なのが中日ドラゴンズだろう。2005年以降でリーグ優勝3回、日本一1回。2002年から2012年まで、11年連続Aクラスと、2000年代のセ・リーグを牽引してきた。にもかかわらず、これまで侍ジャパンには対象の6大会で延べ8名しか選出されていない。ただし、これにはある理由がある。第2回WBCで出場を打診されたとされる5選手が全て出場を辞退。球団はあくまでも「選手個人の判断」としたが、一部で「中日はWBCに非協力的」といったイメージがついてしまったことは否めない。以降はチームの成績下降とともに代表選出自体が少なくなり、このような結果となってしまっている。
このように、侍ジャパンへの選手輩出数を振り返ってみると、チームの成績が大きく影響していることが分かる。来年には金メダル獲得が至上命題とされる東京オリンピック、翌2021年には3大会ぶりの優勝奪還が期待されるWBCが行われる。
恐らくこのランキングも、大会を重ねるごとに大きく変動していくはずだ。超一流選手の証しでもある「侍ジャパン」に、今後どんな選手が選出されるのか、「所属チーム」という視点から見るのも、面白いかもしれない。
<了>
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